管理組合を動かすために 理事が知っておきたい組織の3要素(2019年6月号掲載)

組織と集団の違い

 管理組合を円滑に運営したいとの思いは、区分所有者の共通認識であろう。管理組合を動かす前提として、組織とは何かを知っておきたい。

 集団と組織の違いをサッカーで考えてみたい。

 幼稚園児がサッカーをしている姿を思い浮かべてほしい。ゴールにボールを蹴り込もうと、点を取るという目的は全員が持っているが、多くの園児がボールに群がり、ゴール目掛けてボールを蹴り、自分の役割はゴールすることだけと思っている。仲間にパスをしたり、あるいは共に防いだりはしない。仲間とのコミュニケーションが皆無で協働意識もない。あるのは目的だけ。

 一方、訓練された高校のサッカーチームになると目的はもちろん、コミュニケーションを十分にとりながら自分の役割と仲間の役割も理解し、協働意識を発揮し、ボールテクニックを駆使して攻守を闘う。

 集団と組織の違いがおわかりになったと思う。

組織の3要素

 組織は「目的」「協働意識」「コミュニケーション」の3要素から成り、一つでも欠けると単なる集団となる。

 目的は方針やビジョンも含まれ、その組織を動かす最も重要な要素である。目的がなければ、集団でもなければ組織にもない。組織の目的や協働意識、そしてコミュニケーションはその参加者が関与する。その目的が自分の考え方と異なる場合は、参加する必要はない。

 組織目的、言い換えれば組織の使命(ミッション)や責任あるいは大義と言ってもよいが、それが理解されてこそ参加者の協働意識(参加意識)が発揮でき、さらに会議や報告・連絡・相談といったコミュニケーションを繰り返しながら業務を遂行し、使命を果たすことができる。

 目的を理解しないまま組織に加わると、コミュニケーションも協働意識も噛み合わず、目的達成に至ることは難しく組織の衰退をも招く。

 組織に参加している以上、目的達成への貢献を求められるのは当然と言える。

管理組合という組織

 管理組合には団地・マンションという建物があるが、それは組織ではないので、集まった人たちがその目的を明示し達成に向けた取り組みを構築できる。それが組織であり、主体的・自立的であるほどよい組織、よい管理組合と言える。

 管理組合という組織に参加する(区分所有者という立場になる)ということは、一定の目的やルールを理解することが求められるが、実際は住んでみてはじめて目的やルールを認知することが多く、時間の経過と理解が正比例しないのも現実である。

 そこで「目的の明確化・方針管理・ビジョンの策定」「協働意識の醸成」「コミュニケーション(会議やコミュニティの場での交歓)」に対応するために、総会や理事会、そして専門委員会などへの参加を呼び掛けるとともに、活動等についてこまめな広報を繰り返し、認知・理解を深めてもらう努力を積み重ねたい。

 「理事の仕事が大変だから管理会社に任せている」との声も多いが、主体的・自立的な管理ができないと、分譲マンションとは名ばかりで管理会社の下の賃借人と化す。このような管理組合は意外と多い。

仕組みと行動を加える

 組織を動かすためには組織の3要素に、「仕組み」と「行動」を加えたい。

 管理組合は総会、理事会、各種諮問委員会などと、自治会との連携や夏祭りの開催などの目的達成のための仕組みがほしい。

 コミュニケーションを会議や対話や人々が集まる場と機会と捉え、大局を把握していれば、枝葉をどのようにすべきかを企図できる。仕組みには、どの部署が何を行うかを決めておくが、それこそが組織化である。

 組織行動とは、それぞれの部署の担当者が方針等に沿って業務を遂行するということに他ならない。

性急な結論づけは禍根を残す

 管理組合は駅伝に例えられるだろう。何十年間を走り続けるが、時間的距離は管理組合が自由に決められ、走者である区分所有者は過去から現在、そして未来にタスキを渡さなければならない。それが管理組合の大きな使命と言える。

 目標などの達成と述べたが、達成には「正解」がない。ビジョンを持ちつつ、そのカタチは区分所有者の意見を十分に反映させたい。性急な結論づけは管理組合という組織の性質上、禍根を残すことになりかねない。したがって少数意見にも耳を傾け、コミュニケーションを活発化し協働意識を醸成する。そのプロセスこそが管理組合にとって重要であり、その先に一つの解が待ち受けている。

集合住宅管理新聞「アメニティ」2019年6月号掲載