マンションの長寿命化等を国が直接支援 マンションストック長寿命化等モデル事業

 国土交通省は2020年度予算案で、「マンションストック長寿命化等モデル事業」を創設する。

 同事業は、高経年マンションストックの長寿命化等に資する先導性のあるモデル的な取組みを行う民間事業者を支援し、その成果を広く公表することで、マンションの長寿命化・再生への取組の広がりや意識啓発を進めることを目的としている。
 事業期間は2020年度から2024年度までで、来年度の予算案額は17億円。

事業の準備段階、実施段階2類型で支援

 同事業は、2つの類型(計画支援型/工事支援型)で募集される。

■計画支援型[事業前の立ち上げ準備段階]
 計画支援型では、先導性の高い長寿命化等に向けた事業を実現するための必要な調査・検討等への支援を行い、そのために必要な経費を、1事業あたり年500万円(事業実施期間(意見集約に要する期間)は最大3年間)補助する。
なお、計画支援型は、当該事業完了後、速やかに長寿命化等の事業実施の提案を行うことも事業要件となっている。

■工事支援型[長寿命化等の工事実施段階]
 工事支援型は、老朽化マンションの長寿命化に向けて、先導性が高く創意工夫を含む改修・修繕等への支援を行い、調査設計計画費、長寿命化に資する工事のうち先進性を有するものに要する工事費の3分の1を補助する。

その他の事業要件等の概要は別表1を参照。


 応募のあった事業の中から有識者委員会で先導性等を審査した結果を踏まえ、支援するプロジェクトが決定される。
なお、有識者委員会で長寿命化工事を行うことが不合理と認められた場合は、先導的な建替えも支援対象となる。

先導的な取組みとは

 先導的な長寿命化改修として、

〇長寿命化に資する、新しい工法・材料の導入や技術的に難しい改修工事
(例・大規模修繕の周期延長につながる耐久性の高い新材料を用いる改修工事/専有部分のスラブ下配管のスラブ上化を行う改修工事)

〇地域づくりの観点から新たな機能を導入する改修工事(例・空き住戸を転用して、子育て支援施設や高齢者支援施設等の地域機能を導入する工事/地方公共団体と協定締結した災害時の一時避難施設として、備蓄倉庫等を新たに設置する工事)等が国交省ホームページに例示されているが、単独のテーマだけでなく、複数のテーマにまたがる提案や、マンションの長寿命化に資する独自で創意工夫のある先導的なテーマに応じた提案も広く受け付け、総合的に評価される予定である。

 そのほか先導的な建替えとして、

〇団地型マンションにおいて、敷地分割等の手法を活用する建替工事(例・敷地分割・敷地売却の手法を活用しながら、団地全体の再生を図る建替え等)

〇建築規制などの制約が多いマンションにおける建替工事(例・建築規制などの制約が多いマンションにおいて、隣接のマンションとの共同建替え等の工夫による建替え)等の例も示されている(国交省当該事業HP http://www.mlit.go.jp/report/press/content/001327694.pdf)。

4月から募集開始

 同事業の募集は今年4月中に開始される予定で、募集要項等の詳細はホームページ等で公表される。

 なお、同事業は、国と地方公共団体でマンション施策を一体的に進める観点から、応募マンションが所在する地方公共団体が、マンション管理に関する計画や条例等を策定している(策定見込みを含む)こと等が事業要件となる(該当する地方公共団体は、国土交通省のホームページで後日公表予定)。

※本稿は2月下旬現在の内容で、同事業の実施は来年度予算の成立が前提となり、その間、事業内容が変更されることもあるので、最新の情報のご確認を。

※来年度予算で国交省が行う補助事業には、このほか「長期優良住宅化リフォーム推進事業」があり、その中に「良好なマンション管理」が今年度創設された。同事業では、良好なマンション管理に対応する先導的な工事に要する費用等が補助対象となったが、「良好なマンション管理」は、来年度予算で新設される「工事支援型」に集約される。

(2020年3月号掲載)