マンションに百年住む (13) 業界の悪癖を正すのも管理組合の役割

業界の悪癖を正すのも管理組合の役割

前号でメーカーや業者からバックマージンをもらう専門家がいくらもいると書いた。これは犯罪ではないのか。実は、紹介料、指導料などの名目で経理処理していれば犯罪にならない。収賄罪が適用されるのは、公務員と、仲裁法でいう仲裁人で、民間には適用されないのである。裏処理をしていることも多いと思われ、だんまりを決め込むのは脱税になるが、摘発されることはまずない。法の裏をかいて建築業界では見えないお金がいくらも飛び交っているのである。何よりも情報開示、公明正大を旨とする管理組合にとって、こんな事態は聞き捨てならない。

ちなみに、建築コンサルタントに建物診断を頼むと、必ず外壁仕上げ塗膜やタイルの付着強度試験、コンクリートの中性化試験が項目として上がってくる。この試験は塗料メーカーが無償で協力していると考えて間違いない。良心的なコンサルタントは、メーカーの協力を受けることを告げた上で、メーカーから得たデータの分析費用だけを見積もり計上するが、大方は、いかにも自分たちで試験をするかのようにして無償の人件費まで管理組合に提示している。

本来、特定のメーカーの協力を得るのは、利害関係が生じるから好ましくない。加えて、無償の人件費を計上するなどあってはならない。しかしながら、コンサルタントが自力で付着強度や、中性化の試験をするとなると、メーカーの協力を得るコンサルタントより見積もり金額がはるかに高くなり、管理組合はとても受け入れられなくなる。この辺りの見極めが難しく、厄介なのである。
マンション周辺で裏のお金が動くのは他にもいくらでもある。管理業界も例外ではなく、ことあるごとに出入業者からバックマージンを上納させる会社もあるし、大規模修繕工事の時には、仲介料と称して多額のお金が動くこともある。

今回はずいぶん辛い裏話を書くことになった。個人の力ではどうにもならない社会構造の問題であるが、つまるところマンションは不動産、建築業界の前近代的な悪癖をひきずっており、それを見極め、粛清していくのもこれからの管理組合の役割であることを知ってもらいたい。(満田 翔)

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2010年5月号掲載)