マンションに百年住む (10) 完全主義は止めて、柔軟な対応を

完全主義は止めて、柔軟な対応を

前回、比較的築年齢の浅いマンションの長期修繕計画について書いた。今回は40年近くを迎えたマンションの長期修繕計画について書く。

40年近く経ったマンションの長期修繕計画を考えるのは容易でない。国交省は一昨年、長期修繕計画のガイドラインを出し、既存マンションの計画期間を25年とした。しかし、40年近く経ったマンションが25年先をどこまで見通せるのか疑問である。もともと、戦後マンションの最古老は50年少々である。この内、初期の団地型の多くは等価交換方式で建替えられたし、民間のものは事業所化が進んで、対処療法的な保全処置をしているものが少なくない。40年近く経ったマンションのモデルとなる例がないのである。

とするならここでもまた、初期の先駆的な管理組合が建物の保全体制を自らの努力で整えていったのと同じように、自分の力で試行錯誤しながら長期修繕計画に取り組んでいかなければならない。国や自治体は当てにならないし、管理会社の作る計画はお話にならない。

40年近くを迎えたマンションにとって、もう一つ困難なのは社会の先行きが読めないことである。10年どころか、3年先のことだって皆目見当がつかない。居住者の高齢化は進むし、賃貸率、空き家の増加は待ってくれない。中古価格の下落も問題である。その一方、あきらめていた建替えのできる社会基盤が、思いがけず早く来るかもしれない。こんなことを考えると、何を基準にして長期修繕計画を作ればよいのか分からない。

そこでまずは、高齢化に伴う年収の減少から修繕積立金の大幅な値上げは困難なのを前提にすることになろう。その上で、外壁と屋上廻りは今までの実績を今後も繰り返すことにして、給排水、電気などのインフラ整備をする。重要なのは、あまり厳密に考えないことである。完璧な計画は無理なのだから、今までの実績に基づいたおおよそでいい。前回も書いたことだが、それを管理組合と一緒に考えてくれる専門家と、一定の期間に見直すパートナーシップが重要である。

さらにいうなら、修繕積立金にゆとりがある場合は、給排水設備工事の時に専有部分に立ち入った修繕を検討することや、共用部分の積極的な改善を射程に入れたい。完璧主義は止めて、柔軟な対応を基本にしていこう。(満田 翔)

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2010年2月号掲載)