第1回目の大規模修繕工事:2018年7月号掲載
概要
当建物は、千葉県北部、下総台地の中央に位置し、鉄道と幹線道路に挟まれた敷地に建つ60戸のL字型の建物である。建物診断の結果を踏まえ、築13年を迎えたところで大規模修繕を実施することになった。年明け早々から工事を着工し、約5か月の工事期間で工事を完了した。
◆屋根防水材の全面更新(写真‐1)
住棟の屋上は、パラペット笠木部にひび割れが多く、既存の露出アスファルト防水材に膨れが多くできていた。また、エントランス部の屋根は、パラペットの立上りが低く、防水材端末部の納まりに無理があって、漏水した経緯がある。部分的な補修では後の漏水事故等が懸念されたことから、パラペット形状にも対応できる塩ビシート防水(機械的固定工法)による全面更新を行った。住棟部のパラペット笠木部は、漏水原因になるひび割れ部に軟質形エポキシ樹脂で止水注入を行ってから、ウレタン樹脂防水を施している。
◆消火栓箱の改良(写真‐2)
外部廊下の腰壁部に設置されている消火栓箱の底部が腐食して、錆汁が壁面を汚損していた。箱内の水抜き穴が躯体内に埋まっていて正常な排水ができない状況であった。また、箱と腰壁の間には隙間があり、表面のみシーリングを施しているが、内部は空洞のままであった。シーリング材の経年劣化により、隙間から雨水が浸水して水が底に溜まるため、処理を必要とする。この処理方法として、隙間に防錆グラウト材を充てんすることにした。なお、底部の処理は、水溜まりができやすいため、防錆グラウト材でかさ上げしてウレタン防水を施し、消火栓箱の塗装を行った。
◆24時間換気用ベントキャップの取替(写真‐3)
外部廊下の梁部に設置されている24時間換気用の排気により、廊下のあげ裏部が汚損していた。既存のベントキャップは、平型の縦ガラリタイプで、横ガラリベントキャップに取替えた。排気気流の方向を下方に変えることにより、あげ裏部の汚損低減を図った。
◆外部階段打継部に伸縮目地を新設(写真‐4)
外部階段の腰壁および中壁の打継部にひび割れが発生していた。ひび割れ補修を行っても、ひび割れの再発が懸念されるため、伸縮目地を新設してシーリング材を充填してから外装塗装を施した。
(2018年7月号掲載)