浴室・洗面所系排水管改修工事:2013年1月号掲載

 12月1日、NPO日住協主催の工事見学会が浴室・洗面所系排水管改修工事中のA団地住宅管理組合にて開催された。排水管の改修工事は、築後40年前後の団地では避けて通れない問題として関心が高く、特に今回工事は管理組合が専有部に踏み込んでの工事(専有部の工事費を組合積立金から支出)であったため16団地46名もの参加者があった。(設計・監理/(株)協和建築設計事務所、施工/京浜管鉄工業(株)、工期/6月~12月)。 以下、技術的な内容について設計・監理者に執筆いただいた。

 A団地は1972年竣工の5階建3DK・17棟・490戸の公団分譲管理組合で、平成22年7月に大規模修繕団地内整備委員会を発足したが、23年3月に浴室内排水が漏水するという事故発生のため、雑排水管工事を先行することとなった。自主管理の当組合理事会・委員会は現状をつぶさに把握しており、当社が調査に着手する際には既に詳細な現況写真等が示されていた。

◆その結果として

工事施工前迄の排水管等 の現状(写真(1))
・浴室横引き排水管から の漏水事故
・浴室排水金物の立入り 部の腐食欠落
・洗面所排水縦管からの 漏水事故
・1階便所汚水管まわり の陥没事故(新築時の ときより穴埋めがなさ れていなかった)
などの事象が発生、その都度応急処置を行ってきたが、早急な更新工事の必要が生じるに至った。


写真(1)浴室天井横引き排水管の腐食

◆工事の内容としては

 洗面・浴室系統の雑排水管の縦管と専有部の枝管の取り換え工事を行った。
 新規排水管は「スリーレス」(ナノプラスチック(株))という排水騒音を最小限に抑える遮音材を適用した消音二層管を使用した。(写真(2))


写真(2)新規排水管

 また、台所排水は別系統でベランダから排水の為、今回工事の範囲外。室内作業は縦系統5戸が1ブロックとなり、1戸でも留守されると縦管が結べない為、不在者、空き家、工事期間中の在宅及び不在の場合の対処の周知徹底をお願いしていたところ、490戸全てほぼ工程通り施工できたのは管理組合の数回にわたる事前住民説明会を徹底して頂いた結果であると設計監理者としても感謝をしている。

 配管工事をするに当たり、浴室の天井材(フレキシブルボード)を撤去し、防水層を切らないように、排水管(配管用炭素鋼鋼管)をコンクリートスラブ下で切断して既設配管の撤去を行う。
排水トラップの再生工法として防水層貫通部を「形状記憶樹脂圧着」JPIP工法(ジャパンエンジニアリング(株))」を採用した。(写真(3))


写真(3)浴室排水トラップ再生工事

◆この工法を簡単に説明すると

・防水層を壊さず施工するため、コンクリートのはつり作業は全く不要となる。
・コンクリートの床に埋まっている排水管内部に樹脂管を内貼するので漏水の心配がない。
・形状樹脂は腐食に強く耐薬性も優れている。
・1箇所約半日で施工終了するため。その晩から使用できる。

 その後、新しい管(スリーレス管)を接続し、配管が完了したら、新しい天井材として現在もっとも広く使われている浴室天井仕上げ材で樹脂製のバスパネルを張る。後日でも、オプション工事が可能となる洗濯機ポンプ用排水分岐取り出し用として、床下キャップ止めも本工事とした。

 当管理組合は築40年を経過し、平成25年度には第4回の大規模修繕計画を予定するなど、あまたの修繕工事を経験してきており、自主管理のため建物を的確に把握し、綿密なる計画に沿って改修工事等を行い又住民に対するこれらの修繕改修等の周知徹底が充分されていることが工事をスムースに運んだ最大の要因であった。((株)協和建築設計事務所 藤井 均)

(設計・監理=株式会社協和建築設計事務所、施工=京浜管鉄工業株式会社)