3回目の大規模修繕工事でスチール製品の補修・改修、玄関扉全面改修:2021年2月号掲載

1 建物概要

 「Dマンション」は、東京メトロ東西線の西葛西駅と葛西駅の間に位置する分譲マンションです。建物は1979年竣工、鉄筋コンクリート造の6階建で、開放廊下タイプのマンションです。

 修繕歴としては、過去に2回の大規模修繕工事とエレベーターリニューアル、給水管改修・システム変更(直結増圧化)が行われています。

2 大規模修繕工事実施までの経緯

 管理組合では築37年目の2016年に長期修繕計画の見直しを行い、その際に第3回目の大規模修繕工事を前回の13年後の2020年に実施する計画としました。長期修繕計画見直し後は、大規模修繕実施までの期間に余裕があったため、時間をかけて準備を進めることとし、工事予定の2年前の2018年に建物調査と設計、1年前の2019年に施工業者の選定作業と、充分な検討期間を設けることができました。施工会社は見積業者7社の中からリノ・ハピア株式会社を選定しました。

3 工事内容

 今回の工事は、通常の大規模修繕工事の内容に加え、築41年で劣化が進んだスチール製品の補修・改修や玄関扉の全面改修を行いました。

①スチール製品の補修・改修(手摺、雨樋、鉄骨階段)

 当マンションは、バルコニーと開放廊下に手摺金物が取り付けられています。どちらもアルミ製ですが、手摺支柱の固定部分がスチール製で、腐食が進んでいました。特にバルコニーの支柱では固定金物が腐食で破断し、グラツキが生じている箇所もありました。今回の工事では、スチール製固定金物腐食部はステンレス製の固定金物に取り替え、安全な手摺へ改修しました。

手すり固定金物取替工事

 雨樋は、開放廊下側のみスチール製で、腐食により穴があいて漏水している箇所もありました。今回の工事では、硬質塩ビ製のカラー管に取り替えました。また、既存の排水口が小さく排水がスムーズに流れなかったので、雨樋の取替に合わせて排水口の大きさを広げ、開放廊下床面の雨水が排水しやすくなるよう改善しました。

 鉄骨階段は、過去に改修が重ねられて、床の鉄板は上からウレタン塗膜防水と防滑塩ビシート張りが施されていました。鉄板が完全に覆われていたため、内部の腐食が気付かないうちに進んでいました。今回の工事では、鉄部の錆び処理をしっかり行うことに主眼を置き、既存のシート・塗膜防水は全て剥がして鉄の素地を露出させ、穴があいている鉄板を取り替えた上で、錆び止め処理と床用塗料の塗装を行いました。

②玄関扉全面改修

 玄関扉は、事前に行ったアンケートで錆びや塗装の劣化、すき間風、開閉不良等の不具合の報告が多かったため、既存の枠の上から新しい枠を取り付け、新しい扉に取り替える工法(カバー工法)で全面改修を行いました。新しい扉はプッシュプル錠、PRシリンダー錠のダブルロック、カバー付広角ドアアイ等を備え、各種性能が向上しています。また、開放廊下床面の新規シートの色と系統を合わせて、廊下まわりのイメージが一新するような改修を行うことができました。

4 工事中の対応

 工事は2020年の824日から1226日までの約4ヶ月の工期で行われました。

 今回の工事は、スチール製品の補修・改修工事が多かったため、スチールの切断時や鉄骨階段のシート・防水材を剥がす際に振動・騒音が発生し、今までの大規模修繕工事よりも、居住者の負担が大きい工事でした。

 その中でも、予定通りの工期で無事工事を完了できたのは、居住者の皆様のコミュニケーションが良好であったことや、工事へのご理解とご協力をいただいたおかげであったと感謝申し上げています。

㈲八生設計事務所 鈴木和弘

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2021年2月号掲載)