地域ぐるみで100年住宅を目指すためのライフライン一体改修工事事例:2023年4月号掲載

■概要・経過

 Kタウンは日本住宅公団が昭和50年代に開発した横浜市内のニュータウンで、4つの分譲管理組合がある。1979年に分譲した第一住宅管理組合が築36年目の2015年に、共用部分の排水管更新に併せ、専有部分の排水管・給水管・給湯管・ガス管の全戸一斉更新を終えた。この事例記事については本紙においても紹介させていただいた。

 今回紹介する工事は、そのお隣の「第二住宅管理組合」の事例である。Kタウン第二住宅は、1980年12月に分譲された階段室型5階建21棟・3階建1棟の全504戸で構成される。

 2018年にNPO日住協の「大規模修繕支援事業」を活用し、2019年8月に一日診断を実施した。その結果、共用部分の給水管更新と水道の直結増圧化が2010年に適切に完了していることが確認され、今回の更新対象は共用部分および専有部分の排水管と、専有部分の給水管・給湯管・ガス管ということになり、2015年に工事を完了させた第一住宅と同じ改修対象となった。

 新型コロナ第1波後の2020年6月に実施設計が開始された。翌年4月に一回目の設計内容に関する居住者説明会を開催したが、第4波が到来していたため集会所に大人数を入れることができず、小人数制の説明動画上映会を2週間に渡り開催する形態をとった。2021年10月の臨時総会において施工者川本工業株式会社が承認され、同年11月に工事着手。折しもコロナ禍が収束した2023年2月に引き渡しが完了した。まさにコロナ禍を跨いだプロジェクトとなった。

■改修コンセプト

 お隣の第一住宅と共に、在来浴室とスラブ下排水管を解消し、世代を繋ぐための水回りリフォームが適切かつ柔軟に行えるようにすることで、「100年住宅地域」として資産価値向上の相乗効果を目指した。

 具体的には、①水回りリフォームの可変性・拡張性を新たに装備する、②健全な水回りリフォームが行えるための仕組みを装備する、③耐久性・耐震性などの基本的安全性能を格段に向上させる、というような高経年団地には無かった性能を新たに付け加える設計をした。大事なのは、工事後の管理の仕組みで、取説・リフォーム細則といった最新ソフトのアップデートが欠かせない。

■お隣から学ぶ

 共用・専有配管の一体改修工事は、全てのお宅に入室して「住まいながら行う」ことが大前提であるが、「高齢化した団地で本当にそんな大変な工事ができるのだろうか」と心配に思うことは日本全国どこの管理組合でも一緒だ。この最初の心配だけで早くも諦めてしまう管理組合もあろうかと思うが、霧が丘グリーンタウン第二住宅管理組合のすぐ隣には数年前に見事完成された実例があることが何より心強かった。

 工事前の準備委員会や工事が始まってからの実行委員会の組織体制、工事により大変なストレスを与えられている居住者を支援するための支援グループ作り、居住者が使う仮設トイレ、ランドリー、騒音からの避難、在宅ワークなどができる憩いの場を設けることなど貴重なノウハウをお隣から学ぶことができた。

■コロナ感染による工程変更

 最後にコロナ禍ならではの話しに触れておく。通常、このような共用・専有配管の一体改修工事(入室工事)は、工事会社から提案された最も合理的な工程に従って行われる。順番に流れ作業で縦系統毎(階段室毎)に隙間なく行われるので、居住者は工事日を選ぶことはできない。各戸それぞれ事情はあるとは思うが、指定された工事日は何とかご都合つけてもらうのである。従って、いったん決定した工事日は最後まで変更されない。変更してしまったら、その後ろの住戸の予定が全て狂ってしまうので影響が大きく変更できないのである。居住者も大変だが、揺るぎない工程を最後まで貫く工事会社も大変だ。

 しかし、さすがに今回のパンデミックにおいては、室内側で陽性者が出てしまったら工事場所そのものがクローズになってしまうので工事のしようがなかった。

 そのようなケースにおいては、1階から5階までその縦ブロック丸ごと一番最後の工程にずらし、他住戸は予定通りの工程で流すことで対処した。

文責:設備設計・監理担当
(有)マンションライフパートナーズ 柳下雅孝

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2023年4月号掲載)