3回目の大規模修繕工事で劣化の進んだ金物類を取替:2020年4月号掲載

㈲八生設計事務所 鈴木和弘

1 建物概要・工事までの経緯

 「Nタウン」は、江戸川区南葛西に位置する全7棟・総戸数1324戸の大型団地です。敷地内にはスーパーや商店街、クリニック、幼稚園・保育園、福祉施設があり、生活に必要な店舗・施設が一通り揃っていて利便性の高いマンションです。

 住棟は13~14階建てで開放廊下型の建物です。新築時は1~3期に分けて建設され、1期の6~7号棟が昭和52年竣工、2期の1~3号棟が昭和54年竣工、3期の4~5号棟が昭和55年に竣工しています。そのため、大規模修繕工事も、新築時期別に実施しています。

 今回大規模修繕を行った1~3号棟の過去の修繕歴は、築12年に第1回目の大規模修繕、築26年目に第2回目の大規模修繕、築33年目に玄関ドア取替(カバー工法)、築35年目にアルミサッシ改修(カバー工法)と排水たて管の改修を行っています。

 築39年目の2018年に、前回の大規模修繕から13年が経過していたことから、第3回目の大規模修繕工事の検討を開始し、調査・設計へとステップを踏んで進めていきました。

 管理組合は築10年目から自主管理で運営しています。団地内の修繕関連の検討は、常設の長期修繕計画委員会を設けて、毎月会合を行い対応しています。1~3号棟の第3回目大規模修繕工事もその中で検討を行い、計画を進めていきました。

2 工事内容

 第3回目の大規模修繕工事の場合は、一般的に過去の工事よりも工事部位が多くなる事が多いですが、アルミサッシや玄関ドアの改修は既に終わっており、屋根防水の改修も数年前に行っていたことから、今回の1~3号棟の第3回目大規模修繕工事は、過去の大規模修繕と同様に、外壁の補修・再塗装を主体としたものになりました。ただし、築40年経過していることで、金物類の劣化が進行していたことから、アルミ製品(開放廊下の防風板・バルコニーの物干し金物)の取替や、腐食が進行しているスチール製品(侵入防止フェンス、EXP.Jカバー)のステンレス製品取替、雨樋・ドレン金物の部分補修も同時に実施する計画としました。

既存防風板の撤去

新規防風板取付後

3 工事会社の選定

 過去の2回の大規模修繕工事では、工区を2つに分け、1・2号棟と3号棟で別の工事会社に工事を依頼しましたが、今回の工事では、前回同様2工区にするか、又は1工区で1業者に発注するかをギリギリまで検討し、見積金額や業者へのヒアリングの結果から、工事金額が安くなること、また十分な工事管理体制が確保できると判断できたことから、1工区1業者への発注として、工事会社を㈱NB建設に決定しました。

4 工事中の対応

 工事は2019年の6月17日から2020年の1月18日までの約7ヶ月の契約工期で始まりました。

 当団地では、これまで修繕工事を行う際は、工事をスムーズに進めるために、工事会社・管理組合・設計事務所による現場定例会議を週1回のペースで行っていました。今回の工事でも同様に、週1回の現場定例会議を行うこととし、工事完了まで全部で計27回行いました。この会議の管理組合からの出席者は、長期修繕計画委員会・事務局・各棟代表理事で構成し、委員会・事務局・各住棟と連携が取れるような体制としました。

 工事会社と設計事務所は、この現場定例会議で、工事進捗状況・居住者からの問合せ対応についての報告・相談や、追加・仕様変更工事の検討をタイムリーに行うことができたことが、工事を進めるにあたって大いに助けになったと思います。

 工事は、バルコニーの隣戸避難板のボード取替という大きな追加工事が発生したことや、天候の影響から、約2ヶ月の延長となってしまいましたが、昨年の台風15号・19号の際も事故無く乗り切ることができ、工事は無事に完了しました。これも、工事中の様々な検討事項を、現場定例会議ですぐに対応頂けたこと、また、居住者の工事への理解と協力の賜物と感謝申し上げる次第です。

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2020年4月号掲載)