高層大型マンションの耐久性・耐震性を向上させた給排水設備改修工事:2019年11月号掲載

1.概要と経緯

 Uホームズは東京都江戸川区にあり、大手ゼネコンの設計・施工により1981年に誕生した220世帯のSRC造14階建て単棟型マンションで、工事が完了した2019年で築38年が経過した。特定緊急輸送道路である葛西橋通り沿いに建っていることから、2015年に耐震補強工事(アウトフレーム工法)が行われている。

 過去、築16年目の1997年に給水管の樹脂ライニング更生工事(共用・専有)を行っていたが、その後既に22年をも経過していた。延命策としては、十分にその努めを果たしたといえよう。

 排水管は、塩ビコーティング鋼管(通称:アルファ鋼管)と一部に配管用炭素鋼鋼管(通称:白ガス管)が併用されていた。これまで特に大きな修繕工事は行われていない。

 建物の大規模改修工事の時期が迫っていたことから、まずは設備のみならず建物全体の調査診断と長期修繕計画の見直しを行うことから始める。(2016~2017年)

 調査診断を踏まえた総合的な検討の結果、給・排水設備の改修を分割せず一括して行った後に、大規模改修工事に着手するという方針で長期修繕計画の見直しが承認された。

 給排水設備改修の実施設計と施工会社選定を2017年7月~2018年4月に行い、改修工事を2018年6月~2018年5月に行った。

 本稿では、とりわけ給水設備の改修について紹介する。

2.給水設備の改修について

 現状は高置水槽方式(FRP製受水槽(96㎥)と高置水槽(30㎥))であったが、タンクレスの増圧直結方式に変更することで建物積載荷重を軽くし、全戸における水圧の安定とフレッシュな水の供給、電気代の削減(25万円/年)を実現した。さらに、配管方式を「下向き給水」から「上向き給水」に変更することで配管総延長を短くし、上層階でエキスパンションジョイトを跨ぐ配管経路を廃止することで大地震時の配管破断リスクを大幅に軽減させた。

 また、建物セットバック部分の共用廊下天井にある煩わしい露出配管も無くすことができた。14階建ての高経年マンションでは中間階に「減圧弁室」を要する大きな系統減圧弁が設置されることが多いが、この改修では戸別減圧方式に変更し減圧室を開放した。新しい管材は、地中埋設部分と1階床下ピット内は「水道配水用ポリエチレン管」、メーターボックス内の立て管は「ステンレス鋼管(プレハブ加工工法)」に更新した。

 各戸メーター以降の専有部分の給水管・給湯管については、設計段階の議論において管理組合にて一斉更新を行おうという意見もあったが、ここ数年で戸別のリフォームが進み自身で給水給湯管を完全に更新された区分所有者が1割以上(その後工事着手時点で19%と判明)に昇ることから、希望者のみのオプション方式にて取り扱うこととした。

 しかしながら、オプションによる「任意」としただけでは本来必要な専有配管の更新が推進されないため、更新意欲を高めるよう管理組合主導でアナウンスし資料を整え、説明会や商談会なども複数回開催し、その結果工事完成時点における専有配管更新済み率は41%まで高まった。

 残る部分については場所が特定されているので、今後の管理組合活動の課題として継続的な取り組みにより対応することとなる。そのためのリフォーム申請手続き書類はかなり充実したものが出来上がっている。

更新前の1階床下給水主管(外面被覆が著しく破裂寸前の状態であった)

建築再生総合設計協同組合
設計監理担当:(有)マンションライフパートナーズ

(2019年11月号掲載)