3回目の大規模修繕工事屋根 外壁・バルコニー・階段室及び付属棟・外構施設を修繕:2016年3月号掲載

 当団地は、厚木市郊外の丘陵地に位置し旧住・都公団分譲住宅。築38年を経過し、住棟は鉄筋コンクリートPC及びRC5階建てが210戸、管理・給水施設棟2棟。壁式構造で地盤降下もなく耐震性は優れている。

 当組合は入居数年後に完全自主管理に移行した。日常修繕など豊富な経験があり、過去2回の大規模修繕も旧修繕委員会が担い、今回も理事会が設ける諮問機関である「プロジェクト委員会」が運営した。

 本工事の目的は、屋根・外壁・バルコニー・階段室及び付属棟・外構施設の修繕改修を行い安心して長く住み続ける住環境を獲得する。

 企画・基本計画は施設全体の不具合状態、居住者の要望などをまとめ委員会で作成した。日常管理内容が大規模改修工事に直接結びあったと言える。工事仕様書も委員会で作成し設計事務所(コンサル)が監修した。

 見積もり合わせで施工者を選定し、建装工業(株)と契約を交わした。外壁等改修工事は今回で3回目になるが、設計事務所と施工者とも毎回同じ会社となり継続性が得られた。

 工期は8月から12月の5ヵ月間とした。

 施工体制は、1級建築士2名、2級施工管理技士1名、事務員の4名常駐体制でコンサルは週2回であった。

 工事が始まると足場からの調査により劣化状況が把握され、図面化された。一般的に建物は同じ形をしているが詳細は違うものでありその都度、監督、職人、コンサルが現地にて協議し、施工図、製作図を整備し施工した。

 仕様変更は毎月の定例委員会で承認を受け、結果的に追加変更工事は約30項目に上がった。
 監督は新築集合住宅の経験が豊富で各金物部品取替えなどに長け、また塗装防水の経験豊富な他監督と職人集団のおかげで立派な仕事ができた。

屋上防水工事

玄関ドアはカバー工法で取替え

 本工事の特徴は、

(1)階段室整備として、玄関ドアの取換えを行った。カバー工法で新デザインの大変立派なもので遮音効果も上がり喜ばれている。階段・床を塩ビシート張りとし、階段手摺を新設した。また部分的に強風時の雨・雪の対策を施した。

(2)屋根防水は築10年目に、ゴムシート外断熱砂利抑え工法で張替、今回で28年を経過し改質アスファルト2層工法で張替えた。砂利抑え工法は日射を遮り非固定の押え効果が期待でき耐用年限を大幅に長くする。欧米では多く使用されているが、一般的に不安感があり採用が少ない。今回は既設砂利を半分移動、施工後復旧した。思いのほか移動は簡単であった。

(3)バルコニー目隠し板は前回15年前に取替え、ステンレス製なので大丈夫と考えていたが工場塗装部の劣化(チョーキング)が著しく次回まで持たないと判断し塗り替えた。どうも塗膜が薄いように感じた。おかげで色彩計画が上手くいきグラデーション効果が映えた。

(4)震災の影響は鉄製バルコニー手摺に見られ、コンクリートとの接合部の鉄板が破断していた。地震の影響だけではなく熱膨張による金属疲労も影響しているので中間で切断し二等分した。また、コンクリとの亀裂発生も幾分多かった。

 今工事の評価は大変優れたものと考える。それは、管理組合独自が直接的かつ情熱的に改修工事を主導し、経験豊富な施工体制・コンサルを活用したことである。

 私も紙面をお借りして昭和54年よりマンション改修の仕事を通じ最後に良い仕事ができ関係各社の皆様に感謝いたします。ありがとうございました。(あい設計 今井俊一)

(設計コンサルタント=(株)あい設計、施工=建装工業(株))

(2016年3月号掲載)