形状が複雑なマンションの1回目大規模修繕工事 排水管の瑕疵補修工事等も実施:2015年2月号掲載

 当建物は、都心の市街地に位置し、戸建て住宅やマンションに囲まれた敷地に建つ67戸の都市型マンションである。直線的な西棟と雁行している東棟の2棟からなる複雑な形状の建物が敷地いっぱいに配置され、東棟1階には機械式駐車場が設置されている。築13年を過ぎ、大規模修繕を実施することになり、併せて梁底のモルタルが剥がれ落ちるという瑕疵問題を対応することになった。

◆複雑な建物形状による外部足場架設

 建物形状が複雑であることと、建物内に駐車場があることから、車両を外部に移動すると駐車場費用が高くなるため、駐車場を使用しながら工事が行えるように足場計画を検討した。駐車場入り口は鉄骨ブラケットを設置し、車路部分は吊り足場とした。さらに、建物の壁際が機械式駐車施設になっている部分は、駐車場上部に構台を設置して外部足場を架設した(写真-1)。

駐車場の使用と複雑な形状の外部足場架設

◆梁底モルタル瑕疵補修

 一部の住戸バルコニーや外廊下で、露出した梁の梁底に塗ったモルタルが突然剥落したことにより、剥落部のモルタルを調査したところ、新築時の施工不良であることが認められた。同類の部位は、今後順次浮きから剥落に至ることが予想されることから、売主と協議し、瑕疵補修対応として大規模修繕工事の折に梁底の補修工事を行うことになった。全ての梁底を調査し、モルタルが塗られている梁底について、大きく浮いている部位はモルタルを撤去し、小さな浮き部はエポキシ樹脂注入を行い、浮いていない部位についても予防的にガードピン工法(T字型特殊ピン)で補修を行った(写真-2)。

梁底モルタルをガードピン工法で予防保全

◆排水管経路の瑕疵改善

 ゴミ置き場屋根は、アスファルト露出防水である。10年程度で異常に平場防水層の劣化が多かったため、防水層の全面更新を行った。屋根に隣接するバルコニーからの排水管が、パラペット立上り部の防水層を貫通して設置されていたため、雨仕舞の悪い貫通部が雨水浸入ルートになり、防水層の劣化をもたらしたので貫通配管を止めて排水管の経路変更を行った(写真-3)。

防水層を貫通する排水管の経路を変更

◆1階エレベーターホールの水溜り瑕疵改善

 大雨のときに、エレベーター昇降口前に水溜りができ、居住者から改善できないかと強い要望があった。外部から吹き込んだ雨水が、やや勾配がある廊下を流れて一番低いエレベーター昇降口前の床面に水溜りができることが確認できた。エレベーターホール前の廊下とポーチ前に排水溝を掘り、ステンレス製グレーチングを設置し、雨水の流れ込みを防止した(写真-4)。

EVホール床に排水溝を設置

◆建物廻りの地盤陥没瑕疵対応

 建物の妻側と隣地境界塀間の一部には、地盤の陥没があり埋設排水管が露出していて、排水管の下部に空洞が確認された。排水管廻りの埋め戻し不良による地盤陥没である。また、廊下廻り地盤陥没は、床版持出先端部に立下りがないため、床版裏の空間に土が移動することによる。立下り土留め壁を設置して土の流れ込みを防止する処理を行った(写真-5)。

建物廻りの地盤沈下部に土留め壁を設置

Mマンション(東京都目黒区)

「設計・監理=有限会社鈴木哲夫設計事務所、施工=建設塗装工業株式会社」

(2015年2月号掲載)