高経年団地の外壁等改修工事 外壁既存塗膜を全て撤去:2010年6月号掲載

 O住宅(神奈川県・厚木市)において、4月25日、NPO日住協神奈川県支部主催による工事見学会が開催された。

 同住宅は築後44年の現在、高齢化と賃貸化問題を抱え、今後高経年を迎える住宅にとって参考になる内容も多く、日住協会員管理組合等11管理組合、24名が参加した。

 当日は管理組合より工事への取り組み、設計監理者、施工会社による工事内容の説明があり、現場見学で各工事箇所のより詳しい説明があった。

 見学後の質疑応答では、参加者からコンサルタント選びの方法などの質問や、各住宅の様々な問題の情報交換を行った。

工事見学会があったO住宅

◆建物概要等

 昭和41年に東京住宅生活協同組合が勤労者住宅として分譲。RC造、5階建、2棟、2DK、総戸数60戸の郊外型小規模マンション。
 団地内には厚木市保護指定樹木の樹齢30年を超えるソメイヨシノが見事な枝振りを見せている。

◆管理組合の取り組み

 同住宅は入居すぐに自治会を結成。昭和61年には自治会から管理部門を分離し、管理組合を結成。以来、自主管理運営を行っている。

 平成18年にはNPO日住協に加盟。平成19年には規約改正も行った。
 過去2回の外壁塗装・屋上防水、数回の鉄部塗装等が行われていたが、長期修繕計画に基づいた一定周期の工事が成されておらず、建物の劣化は着実に進行していた。

 管理組合では高齢化と賃貸化が進む中、建替えか改修かを慎重に検討し、修繕をしながら現住居を終の棲家とする道を選んだ。今回、3回目の大規模修繕工事に際し、理事会、修繕委員会を中心に数年前から準備を進め、日住協に長期修繕計画の作成や建物・設備1日診断を依頼。アメニティ新聞の工事事例等を参考に約2年間、修繕について徹底的に勉強。資金調達のため、当初の改修工事予定を1年延期し、修繕積立金を従来の5000円から1万5000円に値上げ改定するなどして計画を進めてきた。

 コンサルタント選定は、実績、修繕工事の取り組み、担当者の評価、評判、費用を検討。実績や評価を加味し、(株)スペースユニオンに依頼。 施工は応募5社から工事計画・安全・品質・工程・居住者対応・最終見積金額等を検討し、建装工業(株)を選定。平成22年3月1日より工事着手。同年7月16日竣工予定。

◆工事の特長等

 事前に行われた、コンクリート躯体の中性化試験では、モルタル層がコンクリートを保護しており、高経年にもかかわらず強度に関しては非常に良い状態だった。

 外壁塗装は、事前の塗膜付着力強度試験で付着力不足が判明。外壁の改修を抜本的に行うために、温水高圧洗浄及び超音波ケレンによる既存塗膜全てを撤去する「全ケレン」を施す事とした。 外壁の色彩は、居住者アンケートを実施。既存色より少し黄色を抜いたアイボリー色をベースにした。バルコニー手すり壁や北側階段壁にはベージュ系を配した。

 鉄部塗装は、度重なる塗り替えに伴う剥離部の段差等の脆弱部を徹底的にケレン後、再塗装。

 バルコニー床防水工事は、美装性を勘案した塩ビシートで施工。

 階段室は、勾配が玄関扉側になっており、水溜りや室内への浸水等の問題があった。この勾配を抜本的に改善するため、玄関部床を上げて調整。 階段手すりも交換した。玄関扉はカバー工法により、新規交換した。

 北側窓サッシは劣化により一部漏水があり、同じくカバー工法で交換。 ペアガラスを使用して、住宅版エコポイントの対象にする予定。

 その他、住戸名札、集合郵便受け、掲示板、PS扉・階数表示札等の交換も行う。

◆今後の課題

 管理組合では、今回の工事を団地の命運がかかるものと位置付け、場当たり的な対症療法的な工事は行わない考えを持っていた。また、資産価値を上げることも目的の一つとし、今後若い世代が移り住む団地にすることも目標とした。

 今後、第4回大規模修繕工事に向け、資金面が大きな課題の一つになるが、居住者をはじめ、不在家主、借家人の協力を得て、建物の適切な管理を進めることが重要だとしている。

既存塗膜は全ケレンで撤去

設計・監理 一級建築士事務所 (株)スペースユニオン
施工 建装工業(株)
<アメニティ新聞333号 2010年6月掲載記事>