4 建物の劣化現象

 鉄筋コンクリートには各種の劣化現象が見受けられます。それらの症状が発生すると直ちに建物が危険になる訳ではありません。劣化の過程があり、最終的に構造体力限界に達して危険状態になる訳です。当然その途中で改修を行ない、劣化の進行を遅らせたり、初期性能に回復させたり、新たな性能を付加させることにより、建物の寿命を延ばし、建物の価値を高める事が可能です。

主な劣化現象

ひび割れ
  仕上げ材、コンクリート本体に入るひび割れ
浮き
  仕上材(タイル、吹き付けタイル)の浮き、ふくれ
エフロレッセンス
  ひび割れ等に雨水が浸透して発生した白色の遊離石灰
鉄筋腐食
  ひび割れ、中性化、かぶり不足により鉄筋が錆びる
中性化
  コンクリートが空気中の二酸化炭素と反応して中性化していく
シール材劣化
  シール材硬化、ひび割れ、隙間等劣化
漏水
  防水不良、ひび割れ、シール不良、ジャンカ等からの漏水

劣化の過程
  ひび割れ
   ↓
  中性化
   ↓
  鉄筋腐食
   ↓
  爆裂
   ↓
  耐力低下

劣化度

 

劣化とその影響

中性化
 コンクリートはアルカリ性で鉄筋はその中では錆びません。但し炭酸ガスと反応して、中性化していき、概ね65年で30mmの深さまで中性化します。
(厳密にはコンクリート強度、水セメント比等の要素で変わってくる)
 中性化すると鉄筋は錆び易くなり、爆裂等コンクリートを破壊するようになり結果として構造耐力を弱めることとなります。
 因みにコンクリート内での鉄筋のかぶり厚さは30mm以上とされており、中性化がかぶり厚さだけ進行した時を物理的寿命とする例が多いようです。

ひび割れ
 ひび割れの原因は以下によります。
1 材料、調合に起因するひび割れ
  収縮、温度、アルカリ骨材反応、
2 施工に起因するひび割れ
  打ち込み、養生、型枠、支柱の存置期間
3 構造(荷重)に起因するひび割れ
  地震、長期荷重(たわみ)、不同沈下
4 環境条件に起因するひび割れ
  温度環境、中性化、塩害、凍害

 ひび割れからの雨水の浸入により鉄筋を錆びさせたり、中性化を促進させることにより、構造耐力を低下させます。乾燥収縮は概ねコンクリート打設後2年程度で収まります。エフロを伴う物や雨水の浸入の可能性の高い物は早い時期に注入等で補修をする事が必要です。
(一般的に0.2mm以下のひび割れ幅のものは補修しない)

浮き
 タイル、モルタル等仕上材は、接着不良や温度膨張、ひび割れ、地震等の外力の影響を受け、躯体と剥離をする経年劣化が進行します。特にひび割れを伴う浮きは雨水の浸入を含め進行が早くなり、剥落する危険も出てきます。状況により今すぐに危険なものと、そうでない物を判定する為に、定期的な調査を行い、張替え、注入等の補修の計画を立てる必要があるでしょう。  因みに、タイルの付着力は「建築工事標準仕様書」日本建築学会編集によれば4N/平方mm以上で合格とされています。

漏水
 庇、バルコニーのスラブのひび割れは雨水の浸入を招き、躯体内の隙間を通って室内への漏水の原因となります。その位置は必ずしもひび割れ箇所の近くとは限りません。バルコニーの排水溝のひび割れも含め、普段からの観察が必要です。
 庇、バルコニーのスラブのひび割れは、乾燥収縮、温度収縮によるものが殆どで軒裏にエフロを伴って見受けられます。