陸屋根・勾配屋根・タウンハウス屋根の防水の種類と問題点

 2003年8月11日、日住協の防水改修工法勉強会が行われました。そのときの、防水技術者・雨宮俊之氏の講演要旨を、シリーズでお届けします。

工法と材料
1.改修に使われる主な防水材料とその特徴
(屋上以外も含む。保証期限は一般的には10年間)

(1)アスファルト防水(露出)
 主な施工場所は陸屋根です。

 1.信頼性が高い
 2.歩行用には適さない
 3.狭いところ、パイプ、架台等の多い所の施工には適さない
 4.アスファルト防水の上に直接施工できる
 5.火を使う
 6.臭いが出る
 7.見栄えはあまり良くない
 8.専門職が少ない
 9.費用が比較的安い

(2)改質アスファルト防水
 主な施工場所は陸屋根です。

 1.1枚または2枚貼り
 2.歩行用には適さない
 3.狭い所、パイプ・架台等の多い所の施工には適さない
 4.アスファルト防水の上に直接施工できる
 5.火を使う工法もあるが危険性は少ない
 6.費用が比較的安い

(3)ゴムシート
 主な施工場所は陸屋根・勾配屋根・バルニコー床です。

 1.伸縮性が良い
 2.比較的綺麗
 3.工事費は比較的安い
 4.アスファルト防水の上に直接施工できない

(4)塩ビシート
 主な施工場所は陸屋根・廊下・階段・バルコニー床です。

 1.伸縮性能が良い
 2.比較的綺麗
 3.施工は比較的難しい
 4.ほとんどの既設防水の改修に対応できる
 5.費用は(1)(2)(3)に比べ高い
 6.15年・30年保証有り
 7.ゴミがあまり出ない

(5)エポキシ樹脂
 主な施工場所は廊下・階段・バルコニー床です。

 1.工事期間が短い
 2.伸び・縮みに追従しない
 3.狭い場所に適す
 4.アスファルト防水の上に直接施工できない
 5.材料使用量を確認しづらい

(6)ウレタン樹脂
 主な施工場所は陸屋根・廊下・階段・バルコニー床です。

 1.工事期間が短い
 2.狭い所にも適す
 3.アスファルト防水の上に直接施工できない
 4.材料使用量を確認しづらい
 5.比較的綺麗な仕上げとなる
 6.施工適用範囲が広い
 7.費用は比較的安く、(1)(2)程度
 8.早く歩行できる材料(2時間位。階段・廊下等に仕様適。速乾ウレタンまたはリムスプレー速乾ウレタン)もある

(7)弾性モルタル
 主な施工場所は廊下・階段・バルコニー床です。
 1.工事期間が短い
 2.伸び・縮みに追従しにくい
 3.工事費は比較的安い
 4.職人により仕上がりの善し悪しに差が出る
 5.セメント系の防水剤
 6.改修工事の時、別の材料が直接施工できる
 7.あまり普及していない

(8)瓦・スレート瓦
 主な施工場所は勾配屋根です。

 1.改修に費用がかかる
 2.瓦・スレート瓦本体より下地の木部の劣化が早い
 3.劣化調査に費用がかかる
 4.耐用年数に疑問
 5.見栄えがよい
 6.全面改修には足場が必要

(9)アスファルトシングル
 主な施工場所は勾配屋根です。

 1.比較的材料費が高い
 2.見栄えがよい
 3.表面の砂が落ちる
 4.全面改修には足場が必要

2.集合住宅に施工されている代表的な屋上防水の仕様

 (屋上防水仕様)       (施工されている割合)    (耐用年数の目安)
a.アスファルト露出防水        非常に多い        12年~15年
b.アスファルト押さえ防水      高層住宅に多い       15年~20年
c.コロニアル(スレート瓦)、瓦  勾配屋根、最近多い      20年~30年
d.アスファルトシングル        勾配屋根           20年位

3.各種屋上防水においての問題点等

(1)管理組合においての問題点等

 ・日常管理、定期点検がなされていないところが多い
 ・露出防水(アスファルト、ウレタン、シート等)の場合は5~6年毎にトップコート塗り替えと共に不具合箇所の補修を行う
 ・年2回程度屋上の清掃を行う( 溜まったホコリ、ゴミ、ドレン廻りの草、木、根)
 ・管理規約で屋上防水はどうなっているか確認する

(2)新築時設計・施工においての問題点等
(施工上の問題として)

 ・各種架台、アンテナ基礎、通気管、ドレン等の廻り
 ・笠木立ち上がり入り隅の施工不良
 ・張り仕舞いの施工不良
 ・防水表面の水溜まり
 ・施工困難な狭い箇所の施工不良

(設計上の問題として)

 ・途中から防水の種類が違う場合の設計の問題
 ・外観にとらわれ過ぎた設計に起因した漏水事故

(3)改修工事においての問題点等

 ・改修しようとする防水に対しての改修材料・工法は無数にある。そのうちどの材料・工法が最善あるかを選定するのは非常に難しい
 ・相談された業者及びメーカーは、他のメーカーの材料は推薦はしない
 ・総合的に工法・材料の選定が出来る専門家が少ない
 ・陸屋根においての勾配不良、水溜まり
 ・ドレン廻りの水溜まり
 ・勾配屋根(コロニアルの場合)の耐用年数はどの程度かよくわからない
 ・勾配屋根は全面改修時、足場が必要となり改修費用が非常にかかる
 ・勾配屋根(コロニアルの場合)表面仕上げ材に異常はないが下地木部が腐っていることが多い
 ・勾配屋根(コロニアルの場合)長期修繕計画での改修時期、予算の設定が適当か疑問

(4)アフターメンテナンスにおける問題点等

 ・漏水事故があったとき、なかなか直しに来ない。下請け任せ
 ・はっきり原因を突き止めずに応急処置で終わらせることが多い
 ・依頼者は完全に直ったか確認できない場合が多い

4.防水業界の形態

 1.各メーカーはそれぞれ同等品を作って競争している
 2.工事業者は材料を通じ(販売代理店・メーカー)広範囲の工事業者との交流を持っている
 3.このような中から各工事の情報を得、また工事を獲得している
 4.防水業界が一番業者間の繋がりが密であり、結束も堅い
 5.特約店は特約メーカーの材料は販売店を通して買うより安く買える 。したがって、材料工法に若干無理があっても安い材料で出来る仕様を組たがる
 6.防水材も同等品と言われる材料をそれぞれのメーカーが作っており、傘下の工事業者はメーカーを指定された材料が特約メーカーのものでない場合は一般販売店から高く買わなくてはならなくなり工事費が嵩む。

改修工事を行うまで

1.工事の発案から防水改修工事完了まで

(1)設計監理方式による場合

設計監理予算総会議決

設計事務所選定

設計監理料見積り

仕様書作成

施工業者選定

見積り

業者決定

工事説明会

工事着工

工事完了

*工事の設計・仕様書作成及び工事監理を設計事務所に委託し、併せて業者選定・見積書の評価・工事説明会等の運営に助言を受ける方法。

(2)責任施工方式による場合

予算総会議決

業者選定

見積り

業者決定

工事説明会

工事着工

工事完了

*工事の設計・仕様書作成及び工事監理を工事を請け負う業者に一括依頼する方法。

2.設計監理方式及び責任施工方式のメリット・デメリット

(1)設計監理方式のメリット・デメリット

 1.仕様にかなった工事が行われたか確認できる
 2.一定した基準・数量で見積りが取れ、比較検討が出来、納得出来る
 3.小さな工事では割高になるが、中・大規模な団地などでは設計監理方式とした方がよい
 4.特定のメーカーの指定が入る場合がある(設計者自身だけでは調査・仕様が組めない場合が多い)
 5.設計事務所に依頼しなくても自主で可能な場合も多い

(2)責任施工方式のメリット・デメリット

 1.設計監理費用がかからない
 2.特命の場合は比較的良心的に工事を行う場合が多い(アフター等にも誠実に対応する)。逆に言えば、業者は比較的余裕のある値段で受注できる
 3.談合されやすい(工事費の比較検討が出来ない)
 4.施工業者側に都合の良い仕様・材料になる可能性がある
 5.仕様にかなった工事がなされたか確認しづらい

3.防水改修の費用の目安
  

    防水改修の費用の目安
  (仮設・諸経費・消費税を除く)
a. アスファルト露出防水         約\4,500/平方m
b. 改質アスファルト防水(常温工法共)  約\6,000/平方m
c. ゴムシート(密着工法)        約\4,000/平方m
d. 塩ビシート(機械固定工法)      約\5,000/平方m
同上(廊下・バルコニーの場合の密着工法 約\5,800/平方m
e. ウレタン樹脂             約\3,500/平方m
f. アスファルトシングル         約\6,000/平方m
g. コロニアル              約\7,000/平方m

*表は防水施工のみの費用であり、実際には別途次の費用が必要になる。建物の既設防水層・建物の形状等にもより諸掛かりが違ってくる。
 a.仮設工事(現場事務所、荷揚げ施設、足場等)
 b.既設防水層または下地の表面処理、膨れ・段さ・不良箇所除去補修
 c.水溜まり、勾配不良箇所の修正
 d.断熱材の取替・新規補足または新規追加施工
 e.押さえコンクリート板の撤去・移動・再取付け
 f.金物製笠木の取り外し、再取付け又は取替え
 g.諸経費、消費税
*上記のうちa.b.g.を含んだ防水改修の予算取りとしては、平方m当たり上記単価の2倍が目安となる。その他c.~f.の項目については状況により費用のかかる割合が違い過ぎ一概に表せない。

4.防水改修を行う業者(カッコ内が下請けとして工事を行う)

 a.ゼネコン(防水専業者)
 b.防水専業者
 c.改修専業者(防水専業者)
 d.塗装工事業者で改修を行う業者(防水専業者)
 e.管理会社の工事部門(防水専業者)

5.改修業者を選定する場合の注意事項

 1.同一業界のみをそろえない(異業界の業者を組み合わせる。例:ゼネコン+防水専業+改修専業)
 2.仕様を業者に提案してもらう場合は、同一条件で見積依頼をしないと比較検討できない
 3.出来れば、居住者の中で専門委員会を組織しアドバイスを受ける
 4.業者は、仕入れ易いメーカーの材料・工法で防水をしたがる(仕様を組みたがる)
 5.新築の場合は、ほとんどの場合性能保証期間は10年であるが、改修工事の場合は保証年限が材料・工法により異なる場合があるので必ず見積の条件に保証年限を指定する
 6.大手ゼネコンが安いといって選定するのは危険。所詮は、一括下請けに工事を任せるので下請け業者の力量以上の内容にはならない(監理者に力があれば良いが・・・)
 7.専業者の場合、工事実績が下請けの多い専業者より、元請けとして工事をしている業者を優先する。管理面が充実しているから

6.防水の性能保証

 ・性能保証は、防水下地・防水材料・施工部位によっても期間が異なる。契約時確認または見積条件にはっきり記載しておく
 ・屋根防水は一般には7年~10年の性能保証をしている
 ・廊下・バルコニーは、5年~7年位となっているが、メーカー・請負者により違いがあるので発注時に確認するか見積条件にはっきり記入する
 ・性能保証は保証期間内に漏水があった場合に無料で補修すると言うことであり、保証期間内絶対に漏らないと言うことではない
 ・保証期間が切れる直前に水漏れを補修し、保証期間が切れたらまた漏った場合はどうなるか問題
 ・15年・20年と長期間保証を出している材料メーカーもある
 ・部分改修の場合は保証はされない

7.防水改修を行う時期(防水性能に対して)

 ・屋上防水改修をいつ行ったら良いかの判断が重要
 ・業者に相談すれば、一定の年数(10年)が経っていれば改修した方が良いという。なぜなら、この先絶対大丈夫とは言えないから
 ・最近漏水事故が目立つようだと思い始めてから考えても良い。防水は急に全体が漏れることはないので部分補修しながら改修の予定を立てる
 ・長期修繕計画で、改修の時期が来たので必ず実行するのではなく、現状を確かめ、漏水事故がなければ順次延期する。特に、屋上防水は改修時期にばらつきがある
 ・屋上防水の耐用年数には施工業者の施工精度により大幅なばらつきがある。同じ仕様でも8年程度で全面改修を行ったところもあれば、18年位で改修したところもある。アスファルト露出防水の場合、大体15年~16年で改修している。

8.工事を実施する時期(季節的な時期)

 ・工事時期は、降雨の少ない時期とする。真夏真冬は避ける
 ・3月、4月、5月、6月、10月、11月、12月が良い
 ・降雨の日、大雨の翌日、風の強い日は作業が出来ないので、工期は充分取った方が良い仕事となる
 ・全体に工期は充分取っておく

9.工事中の問題点(注意点)

 ・廊下・バルコニー・階段の施工中は使用制限、通行制限を受けることがある
 ・臭い、騒音がする
 ・火を使う(アスファルト溶解・下地乾燥)工法がある
 ・階段廻りを汚す(屋上防水時)
 ・雨・風により工期が延びやすい
 ・材料に可燃物が多いので火気に注意する
 ・有機溶剤(シンナー)を使用する場合が多いので管理に注意する

10.改修工事を完了してから良く聞く苦情など

 ・水が溜まりやすくなった。表面張力によって下地に吸い込まれない水が玉状になる
 ・バルコニー・廊下の溝内の水捌けが悪い、水溜まりが解消しない
 ・階段踊り場・廊下の水溜まりが解消しない。勾配調整は非常に困難であり費用がかかる。設計及び見積段階で、どこまで解消するか充分打ち合わせる必要がある
 ・露出防水の場合は、5年ごとに点検を兼ねてトップコートの塗り替えを行った方が良い。
 ・汚れが目立つようになった
 ・手摺・壁・サッシに防水材の汚れが付着した。

(2003.06)

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