マンションからアスベスト(石綿)の健康被害を出さないために

静かな時限爆弾

「静かな時限爆弾」と言われるアスベスト(石綿)の健康被害が広がり社会問題化しています。アスベストの語源は「消し尽くせない」を意味するギリシャ語。安価で耐火・耐久性に優れる便利な素材として建築物を中心に広く使われており、身近な存在なだけに大きな不安が広がっています。

建材として使用されている石綿

石綿は天然鉱石より採取される線維物質で、耐火性、防音性、遮音性、断熱性等に優れており、また、とても扱い易い汎用性のある物質です。したがって、その用途は広範で、その90%は建材として使用されています。
マンションでの石綿の用途はそれ以外に、天井、内壁、間仕切り、浴室の内壁や天井、鉄骨の柱や梁、駐車場の天井、機械室の天井、配管の保温材、など様々な部位に使われています。

吹付石綿が危険

現在、危険とされているのは吹付石綿で、吹き付けた石綿が時間とともに飛散することがわかっています。

現在、肺皮腫などの健康被害は、石綿を直接扱っている工場の従業員、家族、その周辺居住者などと、吹付石綿粉塵の暴露によるものとなっています。
マンションへの石綿吹き付けは1975年に禁止されています。それ以前に建てられたマンションには、ポンプ室等の天井に吹付石綿が使用されている可能性もあります。その場合、換気口から天井裏を通して空気が出入りするようになっていれば、部屋の石綿濃度を専門業者によって測定するなどの調査が必要になります。

石綿を板状にしたものは、極く近年まで生産されていました。板状のものは、吹き付けよりは飛散の危険性が小さいといいます。自宅の壁材などが石綿かどうかを確かめようとして削ったりすると、石綿なら飛散し危険なので、むしろそっとしておいた方がよいというのが専門家の意見です。

浮遊粉塵濃度測定

現状の対策

管理組合としては、落ち着いて、しかもきちんと対処することが必要です。
・マンションの築年を調べる
(築年と石綿使用とは、ある程度関係がある)
・石綿が使われていないかを、設計図書により確認する
(わからなければ、ディベロッパーなどに質問状を送ることも必要)
・吹付石綿があれば、その濃度測定を専門業者に依頼する
(経験があり信頼のおける専門業者)
・決して、日曜大工気分で補修をしようなどとしない
(石綿粉塵を、ほんの少しを吸収しただけでも、発症する可能性があるとされています)

居住空間にある板状石綿をどうするか

まず、石綿を含んでいるのかを素人が見分けることはできません。
また、すでに何らかのことで石綿と思われる壁に傷をつけてしまっている例もあるかも知れません。その場合も含めて検討することが必要です。

そこで、管理組合として、専門業者に相談し、どのように対処するのかの仕様を決めることが必要です。それぞれの居住者にまかせるのではなく、管理組合として、その標準対策案を示すことが必要で、そのためにも、専門業者への調査依頼は必須であると思われます。

今後の問題点

今後の問題としては、吹き付けをしたマンションが建替えを行うとき、万全の対策をとった上で、石綿を除去をすることが必要になってきます。もちろん、板状の壁材なども、そっと取り外すことが求められており、それぞれ、専門業者への相談が欠かせません。

3年前のニューヨークのツインタワービルの崩落では、大量の石綿が粉塵となって飛散したといわれており、今後その被害が社会問題化することになるでしょう。

(アメニティ新聞2005年9月号掲載)