住民合意と公的資金活用で成功したグレードアップ工事:2019年4月号掲載

マンションの概要

 Sレジデンスは六本木毛利庭園に隣接した閑静な住宅地に建つ築40年のマンションです。23戸の小規模マンションとは言え周辺環境にマッチした改修内容という点を意識し管理組合も同じベクトルを共有しながら進めた大規模修繕工事です。

 建物は鉄筋コンクリート造 地上5階建(一部3階建)の中廊下タイプです。計画修繕として、過去に受水槽の撤去と増圧直結給水、駐輪場の新設、給排水共用竪管の更新、準撤去によるエレベーター更新などを随時行ってきました。

修繕工事と改良工事によるグレードアップ

 当マンションは築40年であるものの平成13年の第一回大規模修繕以降、合意形成の不成立などから第二回大規模修繕工事の着手が遅れていました。築年数から言えば3回目の大規模修繕の時期でしたが、逆に着工が延びた結果、修繕積立金が蓄えられ、修繕を越えた改良・改修をメニューに加えたグレードアップを図る事が出来ました。

before

after

具体的な改良工事の内容

サッシの更新 全住戸のサッシをかぶせ工法により高断熱ガスを充填した複層ガラスサッシに更新し、色もシルバーからブロンズ色にすることでイメージアップを図
りました。

玄関扉更新 全住戸の玄関扉更新と併せ鍵もオートロックのノンタッチキーと兼用としました。

バルコニー手摺及び窓面格子交換 全住戸の手摺と面格子を鋼製からアルミ製に交換しました。

集合玄関子機と連動する宅配ロッカー ノンタッチキーシステム導入: 居住者が集合玄関子機にキーをかざすことで宅配ロッカーへの配送荷物の有無を知らせるシステムを導入しました。

サッシ・手摺の更新 交換に合わせて外装色を一新し周辺環境に相応しい今風の建物へのイメージチェンジを図りました。

その他 屋上防水塗装の高反射率塗料の採用、バルコニー床の長尺塩ビシートなどにより機能性、美装性の向上を図りました。

外壁塗装

手すりの交換

最大可能な資金調達

 以下の補助金及び融資を受けた。
・環境省 補助金[高断熱サッシ]
・東京都 補助金[高断熱サッシ]
・港区  補助金[高断熱サッシ]
・港区  補助金[高反射率塗料]
・住宅金融支援機構 融資[マンション共用部分リフォーム融資]

「管理組合・設計監理者・施工者」 三者のコミュニケーションと信頼関係

 工事の成功は施工者や設計監理者の経験、技量に負うのは無論ですが、管理組合を頂点とした三者の信頼関係と充分な意思疎通にかかっています。竣工後の建物をみると、機能面だけでなく築40年のマンションとは思えないイメージアップをもたらせてくれています。居住者の方から頂いた「期待した以上に満足」との評価も、携わった現場担当者を含めた三者の信頼関係の結果に他なりません。

(2019年4月号掲載)