築10年目26階建タワーマンションの大規模修繕工事:2013年6月号掲載

 このマンションは、2階までを店舗とした26階建の超高層マンションである。築10年を過ぎ、実施すべき修繕項目の精査を加え、修繕費用の圧縮に努めながら今やっておくべき修繕と改良すべき部位は何かがテーマになった。

 このマンションの特徴的な不具合として、コンクリート打ち込み手順により発生した大梁(逆梁)の水平方向コールドジョイントひび割れがあった。そのほかでは、通常の経年不具合や劣化のうち2階までの外部石張り階段の石裏に浸透する雨水の吹き出しによる汚損、強風の影響によるバルコニー手すり腰パネルの外れ、竪樋接続部の割れなど、改善対策が課題になった。

工区ごとに専用ステージを設置した高層部のゴンドラ足場

大梁に入った水平ひび割れは、エポキシ樹脂注入工法を選定

 当初のスケジュールでは、春工事として全体計画を進めていたが、現場事務所や資材置場をどうするかを事前に検討したところ、費用の面で公開空地を使用することになった。しかし、マンションを訪れたとき地域の祭事で公開空地を使用していたので、公開空地を使用する年中行事の有無を確認すると、毎年8月までは断続的に使用することが分かり、工事の着手時期を少し先送りして秋工事にスケジュールを変更した。

 足場は、移動昇降式足場を当初検討していたが、1階店舗前に仮設柱脚ができることが問題になった。そのため、1階廻りに仮設物が出ない点や工事の飛散防止養生を重視し、大方の部分を分割養生ゴンドラ工法とするよう見直した。

 補修処理の課題であった大梁のひび割れは、新築施工関係者への聞き取りでコンクリートを打ち込む際に梁背中間で打ち止めした経緯があり、外力等に起因するひび割れではないことが分かった。

 大梁のひび割れは、狭く貫通したひび割れで、深く連続した界面処理を必要とするため、全断面隙間なく注入できる工法材料の選定が要求された。一般の低圧注入工法では施工が不安定なため、自動微低圧で注入できて追い注入ができる工法を選定した。

 外部階段石張り表面のエフロレッセンスは、吹き出し移動水の拡散をできるだけ止める工夫として、階段の入隅に溝を加工し両側の排水溝に移動水を逃がすこととした。

 風圧の影響を強く受けるバルコニー腰パネル止め付け部は、脆弱なアルミリベットをステンレス製にすべて交換した。

 また竪樋は、新築時の芯ずれによる無理な接続が起因して随所に割れが発生しており、呼び樋斜め直管部の長さ調整により芯ずれをできるだけ補正し配管の部分更新を行った。

踏板石の入隅部に右上写真のように溝を加工

写真右:強風による手すり腰パネルの外れ
写真左:無理な接続により屈曲部で割れた竪桶

「設計・監理=有限会社鈴木哲夫設計事務所、施工=建設塗装・フォルス共同企業体」

(2013年6月号掲載)