住宅金融支援機構の融資制度を利用した大規模修繕工事:2012年8月号掲載

1 建物概要

 Wマンション(東京都世田谷区若林)は、東急世田谷線若林駅から徒歩1分、東急田園都市線三軒茶屋駅から徒歩10分という利便性の高い場所に立地している。

 建物は、昭和49年竣工の築後38年。鉄骨・鉄筋コンクリート造の地下1階・地上10階建で、1階部分の店舗(食料品スーパー)1戸、住戸54戸の計55戸で構成されている。

2 大規模修繕工事までの経緯

 同マンションは、これまでに2回の大規模修繕工事を行っていたが、前回工事から既に17年が経過し、その間、鉄部塗装と電気設備やエレベーターの改修は行われてきたが、建物全体としては各所の劣化が進んでいたことから、大規模修繕工事を行うこととなった。

 そこで、平成23年3月に、6社によるプレゼンの結果、(株)三衛建築設計事務所へコンサルを依頼し、大規模修繕工事を進めるために必要な調査と設計を行った。

 資金面では、修繕積立金の積立額が不足していたことから、住宅金融支援機構の融資制度を利用して積立金不足を解消した。

 こうして、工事期間平成23年10月から平成24年3月の大規模修繕工事が決定。公募及び入札の結果、同マンションの建設会社でもある北野建設(株)が施工を担当した。

 大規模修繕工事の合意形成を得るまでは、工事資金の借入などを理由に反対もあったが、同マンションは竣工当時から住み続ける人が多く、良好なコミュニティが形成されていたこともあり、各区分所有者が卒直な意見交換を行ったことで、合意形成に結びついた。

3 工事の特徴

 外壁のひび割れや浮き、鉄筋露出などコンクリート補修や塗装工事、屋根やバルコニー、共用廊下の防水工事など、基本的な修繕工事を行ったほか、居室サッシや玄関ドアの交換をはじめ、共用部照明器具のLED器具化、監視カメラ増設など、居住性能を向上させる各種工事も実施した。

 また、同マンションでは、ステンレス管や直結増圧給水方式を採用した給水設備の改良改修、スラブ上排水対応の排水管更新など、給排水の設備を一新し、今後30年間快適に暮らせるマンションを実現した。

 さらに、1階の床高が、地面より1・8mと高く、階段による昇り降りを解決するバリアフリー対策として、階段脇に段差解消機を設置した。設置に合わせエントランスホールも模様替えを行い、天然石や木製ルーバー等を組み合わせ、マンションの美観改善も図った。
 他に、本大規模修繕工事とは別に耐震補強工事も行われたため、建物の安全性も向上した。

設計・監理=(株)三衛建築設計事務所
施工=北野建設(株)
協力会社=(株)富士防(防水工事)、中央エレベーター工事(株)(昇降機設備工事)、(株)アクアエンジニアリング(給排水設備工事)

(2012年8月号掲載)