入居42年目に給水管更新工事 工事に伴い洗濯機専用給水栓並びに洗濯機防水パンを設置(その1):2011年8月号掲載

H住宅給水管改修工事(千葉県千葉市)

(その1)埋設給水管と共用部給水管の更新

 H住宅管理組合では、入居42年目となる2010年~2011年に給水管全面更新を実施した。今回は、「給水管更新工事事例・その1」として、2010年に実施した「共用部給水管更新工事」について掲載します。なお、専有部住戸内給水管更新工事については「工事事例・その2」として次号に予定します。

◆団地概要と工事計画

 H住宅は千葉県千葉市郊外に位置する、旧公団H団地(総戸数7246戸)の中の分譲街区(6・7街区)として、昭和43年(1968年)入居の40棟・1530戸からなる集合住宅である。

 給水形態は、H団地全体を3ブロックに分けてそれぞれに大型の受水槽と給水塔からなる給水施設より分譲街区・賃貸街区に分岐して給水されている。よって、今回の工事は給水施設の分譲街区分岐点以降の更新となった。

 当団地の給水管は埋設部が鋳鉄管・棟内横主管は当初白ガス管(第2回更生工事の際に塩ビライニング鋼管に更新)・シャフト内竪管と住戸内専有部給水管は白ガス管となっていた。

 管理組合では15年周期で給水管内部ライニング施工による計画修繕を2回実施してきた。1999年第2回目更生工事時の詳細調査の結果、3回目の更生工事は配管の劣化状態から施工不可能なため更新工事として計画する方針を固めた。

 当初の修繕計画では2013年に更新予定としていたが、浴室給水管劣化による階段室内壁への漏水発生と以前に屋外埋設給水管(鋳鉄管)の破損による漏水が発生していたことから、近年大規模地震の発生も予想されており、震災時の給水管破損による断水を避けるために、給水管更新工事を前倒しで実施する検討に入った。

 2009年に屋外埋設管・制水弁・消火栓・棟内共用管・シャフト内枝管・住戸内専有管について詳細調査を実施した上で、2010年6月着工して同年12月末までに屋外埋設管・制水弁・消火栓・棟内共用管(横主管・シャフト内竪管・枝管)の更新完了及び2011年1月から同年7月までに全住戸(1530戸)内の専有部給水管の更新完了を計画した。

 また、敷地内埋設消火栓について確認のため市消防局と協議したところ、公団建設時に隣接賃貸住宅及び隣接敷地外地域を含めた設置計画がされている事と敷地内に既設消火栓ではカバー出来ない範囲が存在する事が判明し、設置位置変更と1カ所増設(計9カ所)を決定した。

◆管理組合の対応

 管理組合では工事期間中は月1回の定例会議を開催して施工者と協議。また、必要事項発生時にはその都度打合せをすると共に、不在住戸及び連絡の付かない住戸の対応等全面的に工事進捗をはかった。

◆共用部工事を終わって

 2010年6月仮設建物設置等準備工事に着手し7月より着工した共用部配管更新工事は予定通り12月末までに完工した。  偶然だったが、埋設給水管を柔軟性のある樹脂管にする更新工事が完工して約2カ月余り後に、東日本大震災が起きたが、給水管に関しては被害は皆無であった。

 2011年1月から同年7月までに実施した専有部給水管更新工事に関する工事事例は次号にて報告します。

(一級建築士事務所 秋設計 秋葉義廣)

(設計・監理=一級建築士事務所・秋設計、施工=6街区担当/建装工業株式会社、7街区担当/京浜管鉄工業株式会社)

【工事仕様】

 給水管については今後の維持管理が不要とする事を前提として仕様を検討し、腐食しない事と地震等の揺れや地盤沈下等により破損しない管材仕様とした。

〔管材仕様〕
・屋外埋設給水管250A以上:ステンレス鋼管
・屋外埋設給水管と床下ピット内給水管75A以上:水道用耐震型高性能ポリエチレン管(PE)
・屋外埋設給水管及び床下ピット内給水管50A以下:水道用高性能ポリエチレン管(AW)
・洗い場系統給水管25A:水道用耐衝撃性硬質塩化ビニル管(HIVP)
・シャフト内竪管及び水道メータ廻りの給水管:ステンレス鋼管(SUS304-TPD)
・水道メータ以降専有部給水管:水道用耐衝撃性硬質塩化ビニル管(HIVP)

〔配管工法〕
・屋外配管は埋設配管とした。
・棟内共用竪管はシャフト内配管として、全て隠蔽配管とした。
・防火区画貫通部は配管周囲をモルタル充填とし、樹脂管にて貫通する場合にはフィブロック使用とした。
・共用部竪管更新に当っては、1530戸の内910戸はメータボックス形式の為、住戸内の物入・押入を一時撤去及び復旧しての工事となった。
・棟内共用部配管(棟床下横引き管・シャフト内竪管・シャフト内メータ廻り枝管)施工時には、仮設給水配管をして住戸内に給水した。
・配管の保温はPS内隠蔽部SUS管は アルミガラスクロス化粧保温筒、隠蔽部HIVP管はポリエチレンフォーム保温筒(ワンタッチタイプ)とした。
・共用部配管の支持金物はSUS製、専有部住戸内の支持金物は樹脂製とした。
・その他、工事用仮設トイレの外に、居住者用仮設トイレを6ヶ所設置した。

<アメニティ新聞347号 2011年8月掲載記事>