第3回外壁等改修工事:2008年6月号掲載

H住宅 (神奈川県・伊勢原市)

 H住宅は、アメニティ第286号に掲載された通り、神奈川県の県央部で小田急線の沿線にあり、最寄りの愛甲石田駅より新宿まで約1時間の郊外型集合住宅です。
居住棟22棟、事務棟、集会所棟から成り、居住棟はPC構造で、東西が妻壁、南側にベランダがある5階建て築35年、世帯数600戸の住宅です。

H住宅

【事前準備と工事を実行する組織の活動】

 前回の改修工事から11年目にあたる今回の改修工事は、3回目の改修工事となるため、「第3回外壁等改修工事」と名付けて、平成19年度の管理組合通常総会において今回工事の予算と併せて提案された。その際、今後ほぼ30年位は建替えのスケジュールを委員会として予定していないことが報告され確認し合った。従って、今回の工事は丁度中間点にあたる工事となる重要な改修工事と位置付けられた。

【今回工事が目指すもの】

 当団地の住棟は、三社の施工会社で建てられ、アルミ手すりの納まりに差異があった。埋め込み部の支柱下部は、空洞形成と内部に蓄水がある。基部周辺の鉄筋腐食や下地鉄材並びに躯体そのものの劣化があり、常に複合した劣化が見られることが多い。また、納まりが多様で、外観だけでは判断できない。支柱内部および基部は、本来ならば第1回目の修繕で行うべき重点項目である。 支柱基部保全に要求されることは、基部下地鉄部の防錆と補強、蓄水防止および基部周辺躯体そのものの再生にあり、単に空洞を埋めるだけでは保全できないと考えている。 この保全にあたっては、アルミ材・鉄材およびコンクリート中の鉄筋防錆効果など多様な要求を満足する材料でなければならず、各種工法材料がある中で、無機質系の特殊防錆グラウト材を充填している。無機系は、アルミ材の腐食等の悪影響があると言われているが、防錆剤入りのグラウト材であれば、充填による悪影響を及ぼす事象や再発不具合はこれまで弊社では認められていない。

【改修工事項目】

①シーリングの打ち換え
②ベランダ手摺の交換
③東西妻壁の浮き処理後の塗装仕上げ
④南北外壁のゆづ肌調塗装仕上げ
⑤ベランダ防水
⑥基礎巾木および鉄部塗装仕上げ
⑦階段室内補助手摺新設
⑧その他

【今回工事の注目】

 シーリング打ち換え工事は、既存のシーリングを撤去する作業に、委員会メンバーが立ち会って、劣化状況を確認したが、過去2回の改修工事の際より劣化の進行を超える状況であることが確認された。PC盤端部の鉄筋が露出し、爆裂を起こしてシーリングが亀裂し、水漏れがある可能性があると思われるため、鉄筋の一部を切断撤去し、端部を修復して新しいシーリングに打ち換えた。

 次に南側ベランダ手摺交換工事は、過去2回の改修工事(11年間隔)では、塗装仕上げであるため腐食が進み、これから先の事を考えた場合、この機会にアルミにするのが良いと判断した。
工事は後付け工法(手摺支柱の取付け位置コンクリート面に穴をあけ、アンカー、部品を差し込んで接着剤で手摺支柱を固定する方法)で、工事は旧手摺撤去と新手摺取り付けを1日で完了する方法を採用。また、強度テストは、3ヵ所の標本を設定し、週1回の条件で行い、基準値内のデータが確認され完了した。

 東西妻壁は、現状は磁器タイル仕上げであったが、今回工事はタイルの浮き調査後、全面ポリマセメントモルタルで平滑な処理を行い、御影石調(エレガンストーン)の塗装仕上げとした。
階段室内補助手摺新設工事は、高齢化が進み、上階の居住者への安全な歩行を助けるために、階段室内右側の鉄部に合成樹脂製の補助手摺を新設。その他の改修工事は、従来のレベルと同等の工事を行い、約6ヵ月の工期内を無事故、無災害で終了することが出来た。

シーリング撤去前劣化状況

大庇爆裂状況

【工事を終えて】

 工期平成19年10月22日より20年4月30日まで、私たち委員会メンバーは「安全第一」この短いけれども重みのある言葉を毎日の朝礼に参加して、作業員の人たちに訴え続けました。また、週1回の定例打ち合わせ、月1回の定例委員会を開いて進行状況を共有しました。高齢者から若い人たちまで幅広い層の人たちが楽しく生活出来る団地を目指した今回の工事は、予定された工期内に無事完成しました。
なお、工事費は予算の約98%、追加工事費は約1・2%でした。

<アメニティ新聞309号 2008年6月掲載記事>