大規模修繕を前倒しして実施する理由は?(2011年10月号掲載)

築22年のマンションで今期の理事長を務めています。昨年、管理会社が建物の調査を実施し、長期修繕計画で2年後に予定している第2回目の大規模修繕を1年前倒しした方が良いとの調査結果が出ました。

管理組合では調査結果を見ても前倒しする事が妥当かの判断が出来ません。どうすれば良いでしょうか?

大規模修繕工事とは、居住者への負担軽減や仮設工事の合理化等による工事費の削減のため、コンクリート躯体の補修や外壁塗装・鉄部塗装の塗替えなどを、10~15年毎に集約して同時に行う工事のことをいいます。

この大規模修繕工事の時期を検討する目的で建物調査を行う場合は、建物各部位の劣化状況を確認した上で、各部位が予定通りの修繕時期でよいか、または予定している修繕時期を前倒しする必要があるか、または先送りが可能かを判断します。

修繕時期を前倒しする理由としては、放置すると危険な状態である場合や、放置すると修繕費が増大する(取替などの大がかりな工事となる)場合が考えられます。

このような修繕時期を前倒ししなければならない工事が、足場を必要とするものか、また大規模修繕のうち多くの比率を占めているかによって、大規模修繕工事自体を前倒しするかどうかの判断は変わってきます。

例えば鉄扉の錆びがひどく早急な塗装を必要としているが、その他の部位の劣化は進行していない場合は、大規模修繕を前倒しせずとも、足場を必要としない鉄扉の塗装のみを先行して実施することで良いと思われます。

大規模修繕の時期を検討する目的で行った建物調査報告書では、各部位の劣化状況を基に、早急に工事が必要なもの、予定通りの時期で良いものなどを検討した結果が分かりやすく書いてある必要があります。調査を行った会社に問い合わせても分からない場合は、経験豊富なコンサルタントにアドバイスを求めることが望まれます。

回答者:NPO日住協協力技術者
一級建築士 近藤武志
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2011年10月号掲載)