団地の読み聞かせ会、新型コロナで中止に。再開待つ子供ら(2020年9月号掲載)

 子どもたちに絵本の読み聞かせを、年2回開催してきたすすき野第三住宅(横浜市青葉区、136戸)で18年前から、継続してきた活動が新型コロナの感染の広がりで7月の開催が中止になった。12月の開催も中止を決めた。「今度はいつ読み聞かせやるの」と子供たちにせがまれるのがつらいと、と創設者の女性の一人は胸をいためる。

18年続いた読み聞かせの会もコロナ禍で中止に すすき野第三住宅で(昨年12月)

 斎藤起世子さんら団地住民5名で、団地集会所で子どもたちに絵本などの読み聞かせを始めた。夏休みの7月と冬休みの12月の2回。メンバーは、転勤や高齢化で数名が入れ替わり、現在は6名。

 絵本を読むのを得意とする国井恵子さんは、図書館から23歳の幼児向けの大型絵本を借りてきて、それを読む。伊藤洋子さんは、1メートル50センチほどのパネルに、絵を張り付けながら、パネルの中でストーリーを展開してゆく。ニンジンなどの野菜を鍋の中でぐつぐつ煮込む様子をパネルで表現する。保育園勤めだから、幼児を引き付けるのはお手の物だ。

 10年ほど前からは紙芝居が加わった。鍋田勝輔さんが担当する。近隣の小学校、保育園、福祉施設などで年間65回ほども口演する大ベテランだ。桃太郎などの昔話の紙芝居を得意の口調で披露する。子供たちが目を輝かせる。

団地を離れた女性もカムバック

 夫の転勤で団地を離れ、数年前に戻ってきた杉坂万喜子さんは世話役を務める。図書館から絵本を借りてきて、よく通る声で、宮沢賢治の童話などを読む。

 小杉洋子さんは、素話が得意だ。絵本や台本無しだ。いきなり話はじめる。子どもたちに話しかけるように語り出す。小杉さんの世界に子供たちは、すぐ引き込まれる。

 読み聞かせの会の創設者として会をリードしてきた斎藤さんは、いつも絵本を読む。毎年2回だから、18年間で36回、読んできた計算になる。

 今年春、団地の西側を流れる黒須田川で、8羽のカルガモが巣立った。7月の会で読むことにしていた絵本も、8羽のカルガモが巣立った話だった。7月は、ぜひこの絵本をと思っていた矢先、新型コロナによる中止で、かなわなくなった。

 会では、いつも、23カ月間かけて、集会所でじっくり稽古をしてから本番に臨んでいる。手抜きをしない、読み聞かせ。子供たちは、6人の、それぞれ工夫を凝らした読み聞かせに目を輝かせるからだ。

 うれしいことに、数年前から読み聞かせの会に、団地の大人たちが、それも高齢のお年寄りの参加が増えてきた。子どもたちとあわせ、40名を超える参加者になったときも。時には、近隣のマンション、団地の住民が聴きにくることも。

 読み聞かせの会の活動資金の一助にと老人会の「花みずき会」も支援する。

 団地の掲示板に、7月の読み聞かせの会の中止の張り紙を出した斎藤さんは、「安心して開催できる日が早く来るようにと願っています」と書き添えた。

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2020年9月号掲載)