4.経年によるマンションの傷みとその対応(3)

2.経年による建物(マンション)の傷みと対策

2-2.物理的老朽化、相対的老朽化への対応

 建物(マンション)の傷みには、建物の材料を含む各部位の傷み、各種の設備機器・配管の傷み[物理的老朽化]と、生活水準の向上により、建物の機能が対応しきれなくなる状況[相対的老朽化]の二つがあることを、前節II.経年による建物の傷みで述べました。また、建物の[物理的老朽化現象]の個々の具体内容(主要なもの)について2-1の項で解説しています。
 これらの二つの現象にどの様に対応していくかは様々です。マンションの「長期修繕計画」により大規模修繕を含む「計画修繕」で対応しなければならないことは言うまでもありません。しかし、これらの内容は単に機能回復のための修繕(建設当初の機能を取り戻す)だけでは対応しきれない問題もあります。昭和50年代に行われてきた「大規模修繕工事」では傷んだものを新しくするといった内容が主体でしたが、近年はそれだけでなく、建設当初以上の機能を付加する内容に変わってきています。これらを「改修工事」と呼んでいます。すなわちその意味は、修繕工事に改良を加えたものとして「改良+修繕」=改修工事で、従来の修繕工事より一歩進んだものとして位置付けています。
 「相対的老朽化」に対しても、改修工事で同時に対応していくことになりますが、これは単に工事だけでは対応できないものもあります。現状の問題点、将来予測、建物全体のグレ-ドアップを考慮して考える必要があるでしょう。
 これら二つの老朽化現象への対応として、以下のような内容が考えられます。

(1)経年による物理的老朽化への対応

■大規模修繕工事での、改修計画で対応する

A.建物の耐久性を考慮した、大規模修繕時の仕様・工法の選択の重要性

 *外壁改修:外壁仕上材のグレ-ドアップ。(部位により外断熱工法等の選択)
 *建物全体の色彩計画に配慮する。
 *屋根防水改修:防水材のグレ-ドアップ。(内断熱から外断熱防水への検討)
 *床防水改修:バルコニ-床、開放廊下床の仕上材のグレ-ドアップ。(防水性、耐候性、防音性、美装性を考慮した仕上材の検討)
 *鉄部・金物類改修:バルコニ-・開放廊下・階段等の手摺り、外壁に設けられた金物類(エキスパンションジョイント、垂直避難口、フ-ド・レジスタ-・ギャラリ・キャップ、室名札等)関係では通常の塗装によるメンテナンスから更新が必要。その際にはグレ-ドアップ(鉄製品からアルミ・ステンレス製品へ)を考慮する。

バルコニー手摺り市中のつけ根部の傷み。
外部・内部より腐食が進行している。

バルコニー手摺りを鉄パイプ製からアルミ製品に交換しているもの。
同時にバルコニー床防水も行っている。

B.建物環境整備への配慮

 *エントランス、エレベ-タ-ホ-ル、階段室出入口廻りのグレ-ドアップ。住宅の玄関。「顔」としての配慮が望まれる。風除室(雨・風の吹き込みを防ぐ空間)の設置、階段室の1階出入口廻りの環境整備計画も必要。

階段室出入口廻りの環境整備工事

C.設備関係での、機器・配管の更新

 *十数年前の機器等は製造されていないものもある。また、性能も向上していることから当然グレ-ドアップとなるが、設備システムの改善(給水方式と給水装置、受水槽・高置水槽の材質・位置、排水方式等)を含め計画することが必要。特に、エレベ-タ-機器の更新等は高額となるため、十分な検討が必要。

エレベーター機器の更新工事

D.共用部分と専有部分の両者が対象
 *専有部分でも内装材の更新、設備器具の更新が必要となる。更に、高齢化に対応するためには共用部分の改善も対象となる。

E.建物形態によっては、地震対策が必要
 *耐震診断・耐震補強等の検討が計画に加わる。

(2)経年による相対的老朽化への対応(物理的老朽化と併せ検討する)

A.住居の狭さ(生活様式・家族構成の変化)
 建物全体での増築の事例もあるが、上下階又は隣戸との2戸1住宅の提案も必要。(子供の成長による一時的な住宅の狭さの解消、将来の親と子の近接)三世帯居住の積極的提案。

B.共用部分・専有部分の設備の陳腐化
 家電製品の普及・増設により電気容量を増やす必要が出てくる。建物全体での改修計画が必要。TV共聴設備等についても、衛星放送CATVへの対応の検討。特に、近年は情報情報化社会への対応が求められているが、急速な技術の進歩により、インフラ改善・整備のための将来予測ができない状態にある。

C.その他
 屋外施設(プレイロット廻り)、付属施設(集会所等)の利用の仕方、用途変更、増築等も計画対象となる。

2-3.経年による老朽化と、建設当初の瑕疵

 建物は、工場で生産される自動車などと異なり、多くの部材を建設現場で加工し組立てまた取り付けて行くものであるため、施工段階での品質管理がキチンと行われていないと、建設後数年で不具合箇所が出てくる場合があります。経年による建物の傷み以外での雨漏りなどに代表される事故は、建設時点での問題と考えられ、これらを瑕疵と呼んでいます。 一般的に建物の内装などの保証期間は2年間となっていますが、屋根の防水に関しては10年間の保証が一般的になっています。
 また、何回修繕しても直らないようなものは、根本的な欠陥があると考えられます。更に、わずか数年で、建物のあちこちに不具合箇所が出るような場合は、素人が見ても、専門家が見ても異常なことです。これらについては徹底的に原因を究明し、欠陥・瑕疵として根本的に問題解決を計る必要があります。

(文責 一級建築士・関東学院大学工学部 田辺邦男)

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