新マンション事情

122.東京都心区における単身化と小規模住宅化の負のスパイラル―開発自由の暴走を止めることが可能か―

 

東京都中央区人口変化平成17〜27年


 前回報告した多摩市と対局する位置にあるのが都心3区である。多摩市が人口増加から減少に転じたが、一方、都心3区の人口増加はすざまじい。2005年から10年間の人口増加率は中央区が最大で44%、次いで千代田区40%、港区31%の順である。本来都市はゆっくり変化すべきで、ヨーロッパ先進国では都市の「成長のコントロール」と「社会計画」が都市計画上の重要な政策となっている。ところが日本では基本的に開発自由で、不動産業、建設業、銀行等はビジネスチャンスとみたら集中豪雨のごとく住宅供給をする。行政は容積緩和で支援するから開発に歯止めが無い。勿論、目指す都市像は無い。急激な都市の成長は様々な社会的ひずみを抱え、拡大してもそれを修正する仕組みはない。イギリスのニュータウンを見学したことがあるが、80年かけて当初計画を達成すると現地で聞かされ大いに感銘した。石の文化と木の文化の違いではない。私が見たニュータウンは大半が木造戸建てで、75年経過しても手入れが良く、老朽化をみじんも感じさせなかった。社会の仕組みが変わり、科学技術が進歩しても、住宅は数世代に渡って住み継がれることで歴史的価値が確立すると言う文化が定着している。ところで、分譲マンションの都心回帰はブル経済崩壊以降であるが、都心3区は地価が高いから、周辺区に比べてやや年齢が高い。住宅の小規模化が進んだため単身者が急増した。マンション居住の生涯未婚者が増えたから、将来老人問題が深刻化しよう。単身者が転居・死亡しても多くは家族世帯向けに転用できない。

 全住宅の単身世帯率は従来より木造アパートベルト地帯が高く、新宿区64.8%、豊島区63.4、渋谷区62.7、中野区61.4、文京区57.2、千代田区56.6、杉並区56.3、台東区56.3、板橋区56.3、これらの地域は無縁社会の代表地域とも言われる。ところが持ち家共同住宅に絞れば、中央区55.6%、渋谷区52.1、新宿区49.3、台東区47.5、千代田区45.1、文京区44.7、杉並区43.9、目黒区42.0、港区41.7で、豊島区、中野区、板橋区等の借家ベルト地域の一部が上位から消え、一方中央区、目黒区、港区等のブランド区がランクインする。中央区に至っては最高比率を示す。戸建てや長屋住宅がワンルーム等の狭小分譲マンションに大量に転換したことが大きな理由である。持ち家だから借家に比べて長期居住化しやすい。将来は配偶者欠損による単身化が加わるから、機能不全の管理組合が多発しよう。勿論コミュニテイー形成は期待できない。なお子育て世代が入居しない理由は、高い住宅価格だけでない。高層マンションの足元は店舗。事務所が多い。人工地盤上に遊び場を計画しても、自転車、野球、ローラスケート、スケボー遊びの禁止が多い。コンクリートの上で幼児がかけまわると危険さえある。現状では子育て世代に売らなくても開発利益の最大化が可能だ。防犯、防災も課題だ。健康で文化的でかつ耐久性がある都市づくりをするにはこの辺で立ち止まって考えることが必要だ。それとも都心区を単身専用地区に指定しますかね。

(つづく)


(2018年4月号掲載)
(松本 恭治)