新マンション事情

111.少子化と空き家問題/まずはワンルームマンションから

 図は主な家計負担者の4年10カ月ごとの変化である。入居世帯のピークは平成6〜10年、11〜15年、16〜20年まで30〜34歳だが、21〜25年は35〜39歳に移行している。それぞれピーク前の年齢帯の世帯数が激減し、特に25歳未満世帯の減少幅が大きい。これは少子化が主な原因だが、さらに近年になるほど晩婚化が進み、親との同居が長期化している若者が増えつつあることにも依る。
 最近では子供が高齢になっても親と同居している世帯は珍しくない。現住宅の所有形態別取得数では平成6〜10年では持ち家が353万人。借家が867万人、21〜25年では各300万人、634万人で、15年間に持ち家が53万人、借家が233万人減らしている。比率にすると持ち家が15%、借家が27%、合計で23%減だから、少子化世代は借家に大きな衝撃を与えている。少子化世代が今後加齢すると持ち家への本格的転入者減に作用するが、一方多くの持ち家所有者は気にしていないし、また気にしたとしても対処の方法が分からないのが実情だ。
 ところで、世帯数減少と建物の滅失件数がバランスすれば空き家は生まれにくいが、近年の住宅構造と建て方は滅失させにくくなっている。非木造共同化・区分所有化・大規模化で取り壊しにくくなっている。既に借家人の多くは非木造共同住宅に居住し、特に大都市ではその傾向が強い。借家共同住宅は経営者が、取り壊すことを決断しても全戸空き家化させるには、戸建てより長い時間がかかる。居住者の立ち退きを要求する場合は立ち退きの補償金を用意する必要が生まれやすい。店舗貸している場合は交渉はなお厄介になりやすい。全区画空き家化しても、経営者が高齢化していれば新たに借金をして建て替えるには躊躇しやすい。立地に依っては建て替えた共同住宅に買い手・借り手が入る保証がない。人口減少社会では滅失、建て替えにも様々なリスクが加わってくる。
 現在までのところ空き家問題は多くの人にとっては借家経営者の問題に過ぎないが、少子化世代が更に加齢すると、持ち家の空き家問題はより拡大する。既に立地不便、老朽低水準住宅の空き家化が始まっているが、空き家化しないまでも中古価格や家賃は極端に下がる。買い手、借り手が見つからない住宅は最後は放棄される。
 戦後、日本の住宅建設は経済成長の道具として重宝された。利子補給、減税で優遇することで関連産業の発展に寄与したが、空き家解消、空き家化防止、老朽化防止には経済支援はおろか基準もない。建てた後に生じる問題にはこれまで行政は民事不介入の名のもとに積極的関与を控えて来た。基準が無ければ勧告も排除命令も出来ないのが実情だ。空き家特別措置法が出来たが、当面は戸建てが対象だ。空き家の実態調査さえしていない自治体が大半だから、まさにこれからだが、空き家対策は金がかかるものだけでない。空き家発見には市民の力が有効だし、長期空き家には空き家課税も良い。ただし持ち主の行方不明は大変厄介である。
 今後、空き家が多い住宅棟を整理するには残留し続ける世帯の受け皿が必要だが、その公共住宅がその任を果たす宛もないから、混乱は続く。(つづく)



(2017年5月号掲載)
(松本 恭治)