新マンション事情

110.住宅のミスマッチ解消と住みつぶし防止が高齢社会の課題/大は小を兼ねない住宅政策とは

 図は全国の単身世帯の住宅規模分布である。若年者ほど借家居住が多いから住宅規模は小さく、一方高齢者ほど持ち家率が高まるから、住宅規模は拡大する。高齢単身者の住宅規模が大きい理由は家族の転出、配偶者の死亡等で、単身化した世帯が多いからだ。一部には単身化を機に転居する高齢者も少なくないが、多くはそのまま同じ住宅に継続居住する。住み慣れた地域なら友人知人も多いし、かかりつけの医師も居る。長く住んだ家なら、狭い通路も無意識で移動できる。元々持ち家は家族が最大化した場合を想定して取得するから大規模化しやすいが、単身になったからと言って、住宅を縮小することは殆どない。使わない部屋が増えるだけだ。
 住宅規模の地域格差は大きいから、富山県の場合65歳以上の持ち家単身世帯が居住する住宅は平均158mに達する。65歳以上夫婦のみ持ち家世帯の場合は平均176mに達する。これほど住宅規模が大きいと、快適を通り越して、家の保守管理、冬場の暖房等に苦労している人が多いはずだ。積雪地帯では屋根の雪下ろしは、命がけでさえある。毎年老人の滑落事故が多数新聞報道される。
 ところで近年になるほど高齢者のみ世帯が増加し、その居住期間が長期化する傾向が強まっている。寿命が伸びただけでなく、親子の分離居住が一般化した結果である。平成15年時点では男性の寿命は80.8歳、女性は87.1歳だから、配偶者が死別後妻は7.7歳未亡人として過ごすことになる。実際は妻が先立ち、夫が残る場合もあり、20年以上も未亡人として過ごす場合、子供宅に引き取られる場合、老人ホームに身を寄せる場合もあるから、後期高齢期の住まい方選択は様々である。離婚、生涯未婚者もいる。
 本人の肉体的、精神的、経済的不安定さと相俟って、近未来の住まい方は本人でさえ予見できない場合が多い。高齢者のみ、特に単身居住が長期化しても、結果論が多い。実は高齢者のみの居住期間が長期化した場合は様々な社会的問題を生む。近年では年収の最高時期は定年直前でなく、50歳代前半が多くなっている。一流会社でさえリストラがあり、失業するサラリーマンが少なくない。自立できない子供と住宅ローンを抱え、その上健康上の不安が有れば、住宅の補修どころでない。
 戸建を売れば土地代が入るが、建物代はただだ。その上収入低下も加われば、修繕意欲は低下しがちだ。しかも高齢期の空き家化は突然やってくる。売らない・貸さない状態で長期間空き家化するのが高齢期住宅所有者の特徴だから、最終的に住宅は荒れやすい。戸建ては個別に更地化して新たな住宅に生まれ変わる可能性はあるが、一方分譲マンションでは、建て替えや滅失は区分所有者の合意が前提となる。
 空き家と単身化が重なれば建物全体のスラム化が急速に進行する。良質な住宅も集団と運命を共にする。それにしても家族世帯が最も多い40歳代で狭い住宅に住み、高齢期には極小人数で広い住宅に住み、最後に住み潰す。住宅の家族人数と規模のミスマッチを解消し、かつ資源を有効利用する方向に舵を切ることが必要だ。
 なお英国では過大住宅居住世帯を住宅難世帯に分類する。まともな保守管理を義務付けられたら、家は身の丈に合わせるのが普通だ。(つづく)



(2017年4月号掲載)
(松本 恭治)