新マンション事情

非木造共同住宅の空き家増加
次世代への負の遺産か

 図は2008年の住宅土地統計調査結果を再集計した都道府県別の非木造共同住宅の空き家率分布である。最高の福井県が34%で3戸の内1戸以上が空き家だから、なんともすさまじい。東海道裏庭地帯は大都市圏から近く、高度経済成長期には大都市圏の製造業が多く進出し、自動車社会化し、市部の市街地は膨張した。しかしバブル崩壊以降、製造業が縮小・撤退し、非木造共同住宅の空き家率が高まった。
 2003年時点の高い空き家率は主に東海道裏庭地帯に当たる地域に限定されていたが、2008年時点では栃木県、三重県に代わって新しく青森県、秋田県が上位に登場した。和歌山県と共に、これら地域の高い空き家率は製造業の縮小・撤退によるものでなく、むしろ地域の激しい人口減少が原因である。非木造共同住宅には借家も持ち家も含まれるが、住宅土地統計調査では、残念ながら空き家を所有権別に区分けできない。ただし、非木造共同住宅の空き家率が高い地域では、総じて持ち家共同住宅の単身世帯率が高い。福島県で45%に達する。市区単位で見ると東京の中心区では単身化がすざましく中央、千代田、港区では45%と高率だ。これらの地域は全ての住宅で単身率が高いから、持ち家共同住宅の単身化が特別の話ではない。
 ところで非木造共同住宅の高い空き家率にも関わらず、県民や行政の多くは無関心である。理由は多くの人々が空き家率を全住宅の平均値でしか捉えられないからだ。平均値で見た場合は福井県の空き家率は戸建て住宅の空き家率に近づく。一方東京都の場合は非木造共同住宅の空き家率に近づくが、非木造共同住宅の空き家率は大都市ほど低い。戸建て住宅との合算統計では地域差は薄まる。戸建て住宅の空き家率がさほど高くならない理由は、(1)共同住宅に比べて世帯人数が多く単身化しにくいこと (2)更地にして土地で売却しやすいこと等が上げられる。戸建て住宅は建設量に比べて中古流通量が少ないが、建て替えや土地取引に転化しやすいことが原因である。
 全住宅に占める非木造共同住宅の割合は地域差が大きいが、高層化、大規模戸数化するに連れて滅失・建て替えが困難になる。空き家が多い地域では建て替えても経営リスクが高まるから必ずしも金融機関が融資してくれる訳でない。実際の使用容積率が法定容積率に近い場合や超えている場合はなお建て替えリスクが高まる。区分所有建物の場合は自主建て替え可能な事例は極僅かに過ぎない。空き家が多い地域ほど空き家が蓄積する恐れが強い。空き家が増えれば賃貸住宅でも区分所有建物でも資金不足が生じやすいから、適切な管理が滞り老朽化が進む。 建物の見栄えが悪くなるだけなら居住するに大した不便はないが、コミュニテイーの衰退、危険、不衛生建築物ともなれば、周辺の住宅世帯から見ても迷惑建物になる恐れが強い。震災時の管理組合解散は可能性が高いが、平常時の解散は100%不可能である。一部の研究者は管理組合の自主解散や自主減築を提言しているが、現実を踏まえない提言は漫画に近い。行政による空き家対策は英・仏でも実施されているが、わが国の住宅行政はひたすら縮小・撤退する方向だ。さて皆さんどうする?(つづく)



(2012年7月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)