新マンション事情

都心居住者の単身化は分譲マンションも例外でない
高齢化+老朽化+借家化+単身化で分譲マンションは生き残れるか

 2010年の国勢調査で単身世帯は31%に達している。田舎を含めての割合である。そこで基礎自治体単位の統計では離島を除く日本一は、大阪市浪速区の73・6%で、次いで名古屋市中区68・5%、大阪市西成区65・4%、大阪市中央区64・8%、福岡市博多区64・2%で、第7位に東京の新宿区の62・6%が初めて登場する。大阪、名古屋、福岡もさすが大都市である。
 東京都に限って単身世帯率と人口比率の上位11(約2割)までの地域を表に示したが、新宿、渋谷、豊島区は横綱格である。但し、近年は中央、千代田、港区の追い上げが激しいから新宿、渋谷、豊島区の順位は安泰でない。問題は単身世帯率の中身である。単身率の上昇原因は主に晩婚、未婚、非婚、離婚者の集積、死別者の定住によるが、地域によってさらに配偶者がいる単身者(企業社員の単身赴任、家族を故郷に残してきた出稼ぎ者)が加わる。このうち男性の生涯未婚率(45〜54歳の未婚率平均値)は大阪西成区が47・2%、浪速区が42・2%である。西成区には釜が崎地区があり、日雇いを求める労働者が集まるから、その隣接にある浪速区にも影響しているようだ。要するに経済不安定な単身者像が浮かぶ。東京都の離島を除く地域でのトップは檜原村の38・4%、奥多摩町の37・6%で、次いで台東区33・9%、新宿区33・6%、中野区33・1%である。女性の生涯未婚率は渋谷区の33・6%で、次いで中央区、新宿区、中野区、台東区、目黒区、文京区と続く。東京都心に居住する単身者の収入は郊外に居住する単身者に比べてやや高い。家賃や住宅価格が高いから低所得層では新たに住宅を取得しにくい。単身者の中高年化によって単身化が進んだのは持ち家共同住宅である。都心区の持ち家共同住宅では4割〜5割が単身居住だ。女性単身者が取得する住宅の多くが分譲マンションである。都心には50m2以下のマンションが新規・中古を問わず多数ある。床面積50m2以下では戸建て住宅はまずないが、あっても環境が悪い。家族向け中心の分譲マンションなら立派な玄関ホールや集会所もあるし、オートロックなら防犯上安心である。単身需要が強いから新築分譲マンションの規模が縮小し、結果さらに単身化する。若い世代は都心部に立地する戸建て住宅を相続以外では取得しにくい。一方既存の戸建て住宅では配偶者の死亡、子供の世帯分離で高齢世帯が単身化する場合が多い。つまり都心部では超高層を含め、あらゆる住宅で単身化が進行している。
 ところで単身者ばかりの地域社会はどう見ても歪んでいる。幸いなことに東京の中心地は事業所が多いから、経済環境は浪速区や西成区とは全く違うようだ。但し、防犯、防火、防災、危機管理など地域住民の協力を必要とする対策になると大いに心もとない。救急医療の現場では親族と連絡さえつかない場合が多い。 さらに非接地型住宅では単身者であるか否かに関わらず住民は匿名化しやすく住民相互は関心は薄く相互の助け合いが成立しにくい。住民の転出入が激しく無縁社会が蔓延するから、孤立、孤食、孤独死、自殺は日常化している。単身化が進む最大の理由は子育て世代が住みにくいからである。まちづくりに社会計画の視点が必要であるが、現状は市場一任であると言って過言でない。(つづく)



(2012年3月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)