新マンション事情

マンションの震災被害の復旧の可能性を時代と空間の運から考える
神戸のようには行かない。東海地震が生じたら復旧困難に

 近年の新規分譲マンションの購入者の6割は30〜39歳の年齢層である。借金して購入するのが一般的になったためである。マンション販売戸数は勿論その時点での景気動向や貸出金利、地価にも左右されるが、右記年齢の人口増減に影響を受けやすい。震災で多くのマンションが被災し建て替えをしなければならなくなった場合に、震災時点の地域の年齢構造が、その後の建て替え計画条件に強く影響する。   図は平成7年の30〜39歳の人口を100とした場合の経年指数を地域別に示したものである。  比較地域を東京都、宮城県、兵庫県、岩手県に限定した。兵庫県は7年1月に震災に遭遇し、宮城県、岩手県は23年3月に遭遇した。7年時点の30〜39歳はいずれの地域でも団塊谷間世代が相当した。従って岩手県以外の人口指数は7年から17年もしくは22年まで上昇している。22年以降の人口は国の予測値であるが、東日本大震災が生じた23年以降の指数はひたすら減少傾向を示す。このような変動状況を示す原因は団塊世代、団塊ジュニア世代、団塊谷間世代が平行移動するためである。



 岩手県の場合は、団塊ジュニア世代の山が消えたことで7年以降に指数が増加に転じることはなかった。原因は若者が地元に残れない進学・就業環境に起因する。兵庫県と東北3県の震災タイミングの違いは、兵庫県は震災後マンション購入層が増加したから、協力デベロッパーの販売リスクは少ないものの、東北3県の場合はもし建て替えをするなら、購入層の減少による販売リスクが年々大きくなる点にある。 兵庫県でかなり多くの被災マンションが建て替えを選択できた理由は、地価が高い神戸市や芦屋市などの市街地で被災マンションが大量に発生したことに加えて、震災後にマンション購入予備軍の年齢層が、毎年厚みを増したことが大きい。一方、東北3県では震災後毎年厚みは薄くなる一方だから、建て替え合意が遅れるほど建て替え推進の環境は悪化する。加えて、東北一高い地価の仙台市青葉区の住宅地地価は神戸市や東京都に比べて格段に低い。20年の住宅地価格は青葉区の場合、東京都青梅市の地価と同程度に過ぎず、宮城野区に至っては、東京と同程度の地価の市はない。地価が低すぎては等価交換の建て替えが成り立たない。商業地に立地している場合は青葉区はさすが東北の経済中心地だから、神戸市や横浜市の中心区に劣らない高地価地域があるが、むしろ法定容積率目一杯またはそれ以上使用の高層建築が多いから等価交換方式の建て替えが可能な事例は限定される。東北のマンションの集中立地で神戸市ほどの被害が生じなかったのは誠に運が良かったと言えよう。マンションの大規模被害発生は避けられたが、ただし今後のマンション購入層の激減は避けられない。  購入対象を生産年齢人口に拡大しても既に東北3県は減少傾向でかつ加速している。30年以上経過マンションの多くのm2単価は最近の新築分譲マンション単価の1/10程度に落ち込んでいる場合が少なくない。将来、等価交換の建て替えが不能としたら、管理組合を解散する必要が生じようが、どっこい平常時の解散合意は更に大変である。(つづく)

(2011年8月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)