新マンション事情

東日本大震災のストック活用を通して考える
もし東京で同じ規模の災害が起きたら

 震災直後に都市計画の専門家達と集まって国に対して空き家活用の提言をする目的で会議を開いた。ところが国の仕組みを議論している内に被災地周辺の空き家がたちまちふさがってしまった。借家の空き家率は高いが、借家の絶対量が少ないからである。何しろ我が国始まって以来の大災害である。原発から20〜30kmの距離にあった福島県の1500人強の葛尾村では津波被害の直後に浪江町から200人が避難してきたが、国が自宅待避の勧告を出す前に住民と村役場丸ごと避難することを村長は決断した。深夜遅く、村で用意したバスを先頭に集団脱出を図った時はまだ行き先が定まらず、とりあえず福島市内の公園を目指した。途中会津の公民館が避難受け入れを了解したのだからその時のあわただしさが想像できる。小さな村だから全員脱出が可能であった。1万人を超える町村であったら、こんな訳に行かない。4月6日時点で会津の避難所には380人が居たが、5月7日時点では184人に減少した。その時点で県が借り上げた旅館・ホテルへの避難者は349人であった。県内自主避難は739人、県外自主避難は248人である。自主避難の内、不動産業者を通して借りた住宅を県の借り上げ住宅と見なして、入居時に遡って罹災者には最高月6万円を、最長2年間を限度に家賃が県から支払われる。5月7日現在100戸近くの申請を受理している。民間借家への家賃補助の方が、仮設住宅建設費より格段に経費がかからずしかも早く対応可能である。親族宅に避難した場合、現行では家賃補助の対象外だが、もし親族宅にも家賃補助や簡単な改造費補助が給付されるならそのまま長居可能な人も居よう。高齢化社会に於ける住宅規模と家族人数のミスマッチが地方ではかなり進行していることも工夫の対象となろう。たった一人で大きな持ち家に住む老人が多い。仮設住宅にかかる費用の一部を改造費や家賃にふり向けたら、借り上げ住宅同様安上がりで早い対策となる可能性が高い。福島市内に居住する私のいとこ夫婦は高齢世帯だが当初3世帯を受け入れた。2ヶ月を経過して今なお2世帯が残留している。これが可能な最大理由は住宅が大きいからである。仮設住宅の必要戸数を減らす工夫が必要だ。葛尾村は村民の為に仮設住宅400戸を建てることを予定している。但し村民が最も要望する対策は原発の早期収束と安全宣言である。それさえ早く出来れば仮設住宅は不要になる。

 ところで、今回の災害に対して、莫大な義援金、支援金等が集まったが、被災者一人当たりの金額をはじくと、過去の震災の場合より少なくなる恐れが強い。膨大な被災者数が発生したためである。そこで東京で同じ規模の震災・津波被害が起きたとして、100万人以上の被災者が発生した場合、支援する自治体の能力は相対的に小さくなる。支援物資、義援金の一人当たりの量と額は東日本大震災よりかなり小さくなる恐れが強い。東京が巨大すぎるからである。親族宅への一時避難でさえ、実に心もとない。東京の住宅は小さすぎる。マンションなら長期受け入れは困難である。その時は皆で諦めるしかない。(つづく)

(2011年6月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)