新マンション事情

都市間競争はまもなくゼロサムゲームへ突入、さらにマイナスサムへ

敗北都市でマンションは生き残れない

 表は各距離帯別時期別人口増加率の経年変化である。全体は1995〜2000年時期まで人口増加率は低下し続け、2000〜2005年では反転し前期に比べて2.7%から3.2%に増加している。それぞれの時期で最も増加率が高い距離帯は1970〜1975年で30〜40km帯で、29.7%を示した。その後1985〜1990年では50〜60km帯に移動した。1990〜1995年には反転し2000〜2005年には0〜10km帯が増加率最大場所になった。つまり郊外に押し出されていた人口移動が反転し大都市圏中心部へ回帰する時代になったことを示す。郊外開発膨張時代は東京都心区では業務ビルを建てる際に住宅付置義務で住宅も同時に建てることを課した。嘘みたいな変わり様である。都心の人口を減らしながら人口の郊外移転を促進した主な原因は、東京大都市圏の人口増加と経済成長を背景に企業が土地保有を目的に土地を買いあさったことである。土地保有が企業活動の源泉であった。この仕組みが崩壊したあと、大幅な土地価格の下落が生じ、企業が保有していた大量の土地を放出したことが大きい。勿論住宅地の選択は地価や家賃と本人の経済力だけで決められる訳でない。第二次産業が東京の中心地域から大都市圏郊外や地方に次々進出したのは安価な工場用地や労働力を求めた結果である。工場移転に伴う従業員の居住地と住宅の選択は付随的選択である。ところがバブル崩壊後製造業はグローバル化の影響を受けて海外移転が促進された。その結果国内の雇用の中心が第三次産業にシフトし、特に資本、情報、人が東京に1極集中した。


 建物の容積率緩和を契機に、東京都心の超高層住宅・ビルの建設ラッシュが促進されたが、この事実が、人口のUターンをさらに加速させた。
  ところで、郊外遠隔地では人口の伸びが鈍化したことから、住宅ストックは厳しい選別にさらされた。借家の大量空き家化は既に現実化している。分譲マンションストックでも「古、遠(特にバス便)、狭、階段アクセス」型住宅の中古価格の下落が顕著となった。分譲マンションの空き家化が差し迫った脅威になった。 加えて郊外拡大期に転入した人々の高齢化が進む。世帯分離で若年者が転出すれば、高齢者だけの世帯が残りやすい。郊外遠隔地における人口減少は今後容赦なく進む。マンションが適切な状態で存続する為の社会環境が悪化する。管理組合にとっては出来れば外れてもらいたい予測である。
  現状で取りえる対策は都市間競争に勝ち残ることだ。但し大都市圏全体ではまもなくゼロサムゲームに突入する。ある都市が人口獲得に成功するには、別の都市が人口を減らさねばならない。手をこまねいた方が敗北。その後はマイナスサムに陥る。負け込みが大きい都市ほど廃屋が多数残される。そもそも中心部と郊外遠隔地の立地間競争なぞ結果は大方予想がつく。隣接都市同士で差を競っても、大勢は崩れない。そこで都市崩壊を最小限に止めるには縮小社会を見据えた住宅都市政策が重要になる。大転換引き算の住宅都市政策とは何かが知恵の出しどころであろう。(つづく)


(2010年8月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)