新マンション事情

縮む大都市圏―管理問題を考えるだけではマンションは生き残れない―

平成7年までは東京都から神奈川、千葉、埼玉県に人口が流出超過していたが、その後、流入超過に転換し今日に続いている。東京圏が拡大から縮小に流れが変化したのだから、大きな転換である。私が住んでいる西東京市では以前は新築住宅の車庫には東京区内のナンバープレートの車が目立ったが、近年では埼玉ナンバーが目立つようになった。これは新築住宅の購入者の流れが20年前とは逆方向に変化していることを示す。ともかく20〜40km圏は住宅の買い手、借り手を確保できるが、大都市圏周辺部ではUターン世帯が残した住宅の空室を穴埋めできない場合が増えた。「古、遠(バス便)、狭、階段アクセス」の住宅ストックは、厳しい選別の対象となったが、今後人口減少が加速すればさらに選別は強化される。低価格化と空き家化対策には管理組合の努力を期待したいものの、大都市圏の構造上の問題が原因だから、多くの管理組合の努力は吹き飛ばされる恐れの方が強い。平成7、12、17年の距離帯別人口増加率では近距離帯は人口増加が激しいものの、40kmを超える遠距離帯では12〜17年の人口増加率は7〜12年の人口増加率を下回り、60〜70km帯ではマイナスになっている。人口が減っても世帯分離・小規模世帯化が激しいから直ちに世帯数が減るわけではないが、人口減少が5年間で10%を超えると世帯数減になりやすい。世帯数減の状態で新築をすれば新築分だけ空き家が発生する。問題は非木造共同住宅の空き家化である。老朽・不良・立地不適の戸建てや木造共同住宅は取り壊されていく可能性が高いが、非木造共同住宅になると更新・滅失は困難だから、そのまま空き家として蓄積しやすい。平成20年の住宅土地統計調査結果の再集計では60〜70kmの非木造共同住宅の空き家率は30%を超えた。一方大都市圏中心部に位置する中央、千代田区も29%以上の空き家率を示す。ただしこちらは超高層住宅の供給過剰が原因だ。



 ところで英国もストックの空き家率上昇が政策課題になったことはしばしばあるが、現在では行政の介入により住宅ストックの空き家化を抑えている。もとより従来からある住宅監視制度で、改善勧告や改善命令、閉鎖命令を発することが出来るが、近年では空き家に対しては短期借家制度を制定して空室減らしに成果を上げている。英国の空き家率は3%に過ぎず、日本の13%に比べてかなり低率である。ストックの活用は徹底しているから、新築戸数は年に15〜20万戸で安定している。日本の人口に換算すると年間30〜40万程度となる。一方、平成20年の日本の住宅着工数は約110万戸だから、英国がストック対策にいかに力を入れているのが分かる。適切な都市計画も空き家発生の防止に機能する。わが国では都市の成長のコントロールもなくただ市場に住宅供給を任せるだけであるから、人口減少社会では都市そのものが健全状態で生き残れない。そこで全国の管理組合団体は管理のハウツウを主張するだけでなく、政策を研究立案し、国に対して影響力ある存在になって欲しいと願うが、これはひいきの引き倒しであろうか。
(つづく)

(2010年5月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)