新マンション事情

超高層住宅の盲点―超高層住宅は良質なストックとなり得るか

東京の都心には多数の超高層が林立したが、まだまだ増えるらしい。超高層居住に様々な問題点があっても、内部だけの問題ならば、部外者としては鷹揚に構えて居られる。但し、ここまで大量に供給されると、郊外のマンション価格を没落させる原因の一部となるから放って置けない。最近の超高層住宅の土地持ち分は10m2程度でも建ってしまう。都心部では狭い敷地に1000戸以上の規模の超高層住宅が次々と供給された。最近では東京23区内の分譲マンションの供給戸数の半分以上が超高層住宅である。容積率緩和は一銭も使わず富をつくり出すから錬金術に近い。市街地再開発事業では400%の容積を900%に化けさせる位朝飯前だが、地権者に自治体が入っていれば誰も止められない。ベランダや廊下の一部が容積率算定から除外されたことで共用部分にゆとりが生じ、空間の質が向上したのは事実だし、さらに大幅な容積率アップで住宅戸数を増すことができたから、超高層住宅の低価格化にも貢献した。但し、怒涛のように建設ラッシュが起きると人と金が大量に移動する訳だから、郊外マンションの中古価格低下は都心の容積率緩和が原因していると言っても過言でない。国交省の容積率緩和についての平成13年当時の答申を読むと、政策のプラス面ばかりが強調されて、負の部分には記述がない。


ところで、超高層住宅が人気の間、デベロッパーは建設にまい進する。ただし大衆化した現段階では、高額で分譲したはずの3LDK住宅が15年経過で1000万円以下に落ち込んでいるのを多数見かける。この傾向は札幌市や仙台市などの地方都市で顕著だ。修繕積立金が月3000円程度に据え置かれたままで、果たして大規模修繕実施が可能か疑問だ。高い管理費が低所得者の中古購入を躊躇させる効果はあるものの、それでは中古価格はさらに低下する。経費節減のため自主管理したくても建物の構造・設備は、素人の理事が理解出来るほど単純でない。従って多くは管理会社の呪縛から逃れられない。ヒヤリングすると更に問題が浮かび上がってくる。大規模化で非住宅用途や階数が異なる複数の建物が複合しやすい。
修繕費負担を巡って紛争に至った事例があった。状況によっては規約改正が困難になる。もともと販売時に設定された月々の徴収修繕積立金額は販売促進のため低く抑えられている場合が多い。機械式駐車場の収益を管理費に投入する場合、機械の修繕や更新費を誰が負担すべきか明記されない。管理会社からの下請け企業があっても、それらの契約の実態を管理組合に通知しない場合も少なくない。個人情報保護の観点から名簿作成を断念している場合は防災機能が低下する。URは下半分が賃貸住宅で、上半分が分譲住宅の超高層住宅を建設中である。建設至上主義もここに至っては空いた口が塞がらない。管理への想像力がかけらも無いのだ。 管理組合の熱意や問題への対応能力はマンションでまちまちだが、超高層住宅の管理問題が社会問題化する時期はそう遠くない。現在は住民の無関心と管理会社の秘密主義が問題の顕在化を抑えているに過ぎない。事態は深刻だ。(つづく)

(2010年2月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)