新マンション事情

単身化の波にどのように付き合えばよいか―アーバンルネサンッスが目指したもの

先の号で分譲マンションの居住世帯の少人数化、単身化を取り上げ、マンション管理の基盤が揺らいでいることを報告した。実はあらゆる住宅、あらゆる地域で進行し、戸建て持家も例外でない。少し前までは若年単身者の場合はワンルームの借家に居住して、結婚、出産、成長を機に住み替え、住宅購入し、ステップアップするのが住宅スゴロクと言われていた一般的コースであった。ところが、近年では少子化が進んだことから親の経済的支援が大きいこと、生前贈与の非課税枠が拡大したこと、住宅ローンの低金利が持続していること、新築の住宅価格が低下傾向にあること、晩婚、非婚者の増加等によって、従来の住宅スゴロクが大きく変質した。中古となればかなり価格低下するから、当初段階で家族向けの住宅も単身や夫婦、片親等の小規模世帯や低所得世帯でも購入しやすくなった。低水準住宅が大量に空き家化する中で、水準の高い住宅を供給すれば、既存の住宅はさらに価格低下する市場の動きをフィルタレーションと言うが、これが本格化しつつあるのだ。


高学歴、高収入の未婚女性が増えているが、女性単身者が購入する住宅の9割はマンションである。防犯を重視するから、駅から近く暗い夜道を歩かないで済むオートロックマンションで、都心区の中でも港区、品川区、目黒区、世田谷区、渋谷区の人気が高い。一方、生涯未婚男性は低学歴、低収入が多いから、借家が多い台東区、荒川区、北区、板橋区、足立区に集中する。豊島区、文京区、新宿区、中野区は両者の混合の性格を持つから、単身率は高い。家族で入居した場合でも長期経過すれば単身化する確率が高い。都心は通院や買い物に便利でも近隣関係が希薄だから、離職後の単身者はしばしば社会的孤立に陥りやすく、孤独死も多い。都心部では訪問介護サービスが手厚いものの後期高齢者になれば地区外転出が急増する。主な移動理由は親族との同居、近居、または施設入所だ。東京23区を離れなければならないが、それでも施設に入れれば運が良い。周辺3県と多摩地域は東京23区より遅れて高齢化が進むと予測されている。今後、東京23区の高齢者を受け入れる施設余裕が無くなった時、単身の虚弱高齢者はより遠隔地に輸出される恐れが強い。
住宅価格、家賃の安定を図ることは国家の義務で、福祉の基礎だが、残念ながら日本政府には伝統的ところでバブル崩壊以降、国はアーバンルネッサンスと称して都市再生を目的に都心部の容積率緩和を次々実行した。その結果、超高層オフィスや超高層マンションが林立した。都市再生は土地活用による経済活性化が目的で、健全な地域社会の建設とは無関係だ。膨大な量の単身者とオフィスから繰り出すサラリーマンでターミナルは夜遅くまで活気づいたが、繁華街を一歩離れるとコミュニテイー不在の単身者居住地区が広く形成された。高層マンションの部屋の灯りは夜遅くならないと点かない。英国も同じ頃都市再生に取り組んだが、主な目的はコミュニテイー再生だ。街づくりの主役は地元自治体と住民で、超高層はもちろん巨大建物、巨大外部空間を排し、路地の復活を目指した。同じ「都市再生」でも大きく中身が異なるのは日英の都市の思想、民主主義の伝統が違うことによろう。(つづく)

(2010年1月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)