新マンション事情

持ち家共同住宅の単身化の意味―住宅政策の貧困を映す鏡か

前号で、マンション密度が薄い地方とマンション密度が高い東京都で持ち家共同住宅居住世帯の単身率が高いことを示した。それでは地方都市で分譲マンションのストックが増えれば単身率が低下するかに見えるが、実態は逆だ。12−17年の動向では東京以外ではストック密度が低くマンシション世帯増加率が高いほど、単身率が増加する(図)。この原因は単に平均住宅面積の乖離だけでなく、地方都市の市街地拡大が止まらない上、持続的な少子高齢化と家族分解の影響が強いためだ。持ち家共同住宅居住者の単身化は、マンション開発後進地が開発先進地の後を辿るのではなく、むしろ先を行く結果となっている。
単身者がマンション居住者の中核になると何が問題となるかを考えなければならない。推測できる内容は以下の通りだ。@中心市街地への人口呼び戻しを急務と考えている都市では、マンション供給戸数が多くても見た目ほどには人口は増えないA単身者は就業している間は管理組合の運営や地域に関心を持ちにくい。役員のなり手が少ないB災害時に安否確認をしにくい。昼間は人が殆ど居ないビルになるC近隣関係が薄く地域住民による危機管理が機能しにくいD東京都では将来マンション住民が老人ホームの大きな需要層を構成するものの東京都、特に東京特別区内には福祉施設が不足している。一方地方都市ではマンションの全住宅に対する比率は小さいから、持ち家共同住宅世帯の単身化の都市全体への影響は小さいE持ち家共同住宅世帯の単身化が大きいマンションでは借家化しやすい。地方都市ではさらに空き家が加えられる。以上は平均的数字だからマンションを個別に見れば数字は拡散する。単身化そのものを管理組合は阻止できない。管理組合が単身化に振り回されないことが重要だというだけでは多分対策にもならない。


ところで、単身者が持ち家共同住宅を取得する根本原因は、ヨーロッパ先進諸国と日本の住宅事情を比較するとより明確になる。ヨーロッパ先進諸国では借家と持ち家との規模格差は小さい。民間借家には家賃補助がつくから底上げされている。具体的数字を挙げれば、日本では持ち家が120u、借家が43・8uである。同様に英国;87u、64u、フランス101.4u、68.3u、ドイツ113.0u、68.9uである(国土交通省住宅局「2005年度版住宅経済データー集」より)。ウサギ小屋と英国人から揶揄された日本の住宅は実は持ち家では英国をゆうに超えている。本来単身者は、その時々の状況に応じた住み替えが可能な借家の方が持ち家より適しているはずだが、なにせ日本の借家水準は持ち家に比べて格段に低い。さらに高齢単身者であれば家主から賃借を拒否される場合もある。従って将来の生活安定を目指せば無理してでも若い内に持ち家を取得せざるを得ない。持ち家取得は自らの老後保障に他ならない。一端持ち家にたどり着いた後で借家へ移転するのは、人生の失敗と見なされやすい。良質で安定した賃貸住宅が少ないこと、老後保障が弱いこと等を持ち家共同住宅の単身化の主原因と考えるが、いかがであろうか。(つづく)

(2009年10月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)