新マンション事情

ある投資物件化したマンションの再生の記録/持ち家居住世帯率上昇の謎

1991年、123戸(家族向け87戸、1ルーム36戸)、地方都市、H建設が投資物件として県外住民に販売したため、当初、持家居住の世帯は1割以下であった。1996年にH建設が倒産し、管理会社も連鎖倒産した。H建設とは無縁のA管理会社に管理委託したが、未集金が増加し管理機能は低下した。1999年に4人の居住者が立ち上がり自主管理に移行したが、A社と解約した時には管理組合の貯金は21万円しか残っていなかった。その後メンバーが次々欠け、1人だけが残った。その人が理事長の時代には4年間総会が開かれなかった。自主管理と言え、持家居住者が極端に少なく、理事のなり手がいなかったから管理組合は実質機能停止していたようだ。直接雇用された管理人が権限を行使し、業者の選定を独断で行っていた。次第に滞納金が膨れ上がったが、幸運なことに犯罪はなかった。2003年ころから今のメンバーが立ち上がり、2度目の改善に乗り出した。現副理事長は投資のつもりで購入したが、65歳の定年を機に移り住み着いた。管理が不正常であることに驚き、たまたま当時定年退職していた現理事長と一緒に正常化に取り組んだ。管理費の1割を修繕積立金としていたが、この方式は地方都市では今でも珍しくない。到底大規模修繕が出来ない状態であった。
最初の取り組みは1500万円に膨らんでいた未集金(30名)の回収であった。2007年までに240万円に圧縮した。ここに至るまで3年かかった。2年間は長期修繕計画の準備に取り組んだ。毎月徴収の管理費を下げず、そこから年間350万円を節約し管理組合の貯金とし、さらに駐車場(平置き)の年間収入700万円も全額修繕積立金に振り向けた。駐車場は65台で不足していたが、機械式駐車場を熟慮の上設置しないことにした。住民に修繕積立金の必要性を説いて、2008年に修繕積立金の値上げに踏み切った。家族向け住宅の標準的な管理費と修繕積立金の合計は月14000円位である。最初の管理組合の正常化は住民の協力を欠いて失敗したが、2度目の正常化で協力を得た。県内の管理組合団体に相談し助言を得たこと、当該団体に参加し弁護士の協力を得たことが正常化へ大きく寄与したようだ。滞納金の認定は事務処理上の不明部分があり、滞納額決定には色々苦労した。何度も督促を行うなど、時間と労力が必要であった。一般的にはこの段階で諦める組合が多い。

 

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逆コの字型で中庭を挟む配置。2階の家族向け住宅1区画分を集会室として使用。価格が安いので外国人居住も多い。外壁は東京に比べて汚れない。


現執行体制になってから着任した管理人の話では共用部分にゴミのポイ捨てが多かったが、今は無くなった。花壇も誰かが手入れするようになったとのこと。管理の改善にはリーダーの熱意と住民の協力が不可欠だが、ただし中古価格には良くも悪くも反映しない。地方の購入者は管理の善し悪しでなく、築年数で判断するためだ。持家居住世帯は現在40世帯で3割となった。50戸が賃貸、空室が30戸程度だ。持家居住者が増えた原因を管理組合役員は分らないと言うが、正常化には寄与したようだ。元々借家需要が乏しく、空き家も多く、中古価格の値下がりも激しいことが投資物件を減じた可能性がある。皮肉な結果である。
来年第1回目の大規模修繕を実施予定だ。企業の生き残りが目的とは言え、投資型販売は罪深い。(つづく)

(2009年8月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)