新マンション事情

非木造共同住宅の空き家率増加の原因は

図は非木造共同住宅の空き家率である。茨城、栃木、群馬、山梨、長野、岐阜、三重県に至る東海道の裏庭が高い空き家率を示す。これら地域はいつの間にか製造業従事者比率で日本有数の工業地帯になった。理由は農業からの脱却を目指して各自治体が大都市から企業誘致すべく郊外の工業団地造成にまい進した結果である。   土地分譲価格の安さ、パートなどの豊富な低賃金労働者、大都市圏からの近い距離、インフラ整備が誘致の武器となった。内陸型の工場であるから電気、機械、自動車等の部品産業で熟練の下請けを必要としない工業が主流を占めた。平坦な土地ならどこにでも進出可能であった。  ところがバブル崩壊後グローバル化の波でこれら地域の多くの工場は中国や東南アジアへ移転した結果、製造業従業者が激減した。製造業従事者比率と非木造共同住宅比率、製造業従事者減少率と非木造共同住宅空き家率は極めて相関が強い。 製造業従事者企業誘致の過程で市街化調整区域は開発自由特区化し、大型店舗、コンビニ、福祉、教育、医療、遊興等の施設および住宅までも次々中心市街地から移転した。  中心市街地の空洞化と最寄り駅との脈絡を欠いた無秩序な郊外開発を支えたのは自動車社会である。自動車社会を牽引した製造業が撤退しても製造業以外のあらゆる産業や生活施設が郊外化した現状では簡単に元には戻せない状況だ。自動車保有率は非木造共同住宅空き家率と強い相関を持ち、東海道の裏庭に当たる地域が高い保有率を示す。  各自治体は市街化調整区域を次々用途地域に繰り入れることで、市街化調整区域の開発を抑制しているかに見せているが、薄く広がった市街地の人口密度低下は介護訪問を困難にし、特養やグループホームへの待機者リストを増やしている。ただし福祉の総量抑制政策の下では待機したままで多くの人々が人生を閉じる。バスなどの公共交通機関は壊滅状態で自家用車が無ければ生活できないから、駐車スペースが不足している古い集合住宅は空き家が多い。小店舗、スーパー、ガソリンスタンド、食堂、診療所、遊技場などの各種事業所も自動車社会の下では厳しい競争にさらされるから、新築物件と廃屋物件が混合するのがこのエリアの特徴である。


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ところで非木造共同住宅の空き家率は平成15年の東京で11.9%に過ぎないが、山梨では38.4%に達する。分譲マンションの空き家率を正確に算出できないが、交通不便な場所に立地し古く、床面積が小さくエレベーターがない中層住宅の上階部分で空き家率が高いことが確認される。新築分譲が困難地域であれば存続も困難でもあるから 地方都市での空き家大量蓄積は十分予測可能だ。地方の住宅事情に首都圏の居住者が目を向ける機会は少ない。知っても断片的である。大都市圏周辺部は既に車社会であり、しかも製造業の進出撤退が激しい地域だ。大都市圏が決して安泰でないことは地方の体験から予測可能である。(つづく)

(2009年2月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)