11.機械式駐車場は立地によっては時限爆弾になる

 群馬県におけるマンションの機械式駐車場設置は1987年が最初であるが、当初は平置きと機械の併用であったが次第にオール機械式が登場するとともに設置率も100%となった。最近では機械式で200%設置も登場している。1993年には206戸の分譲で100%設置のオール機械式が登場したが、場所はなんと市街化調整区域である。

 東京の人は市街化調整区域と言えばびっくりするかも知れないが、開発規制がゆるい群馬県では市街化調整区域と住宅区域では土地評価額はさして変わらない。以下はDマンションの機械式駐車場に関する管理組合の悪戦記録である。まず土地の値段が安いにも関わらず容積率400%も可能だからデベロッパーから見れば魅力的な土地であったに違いないが、それにしてもマンションの足元を機械式駐車場で埋め尽くしたのには度肝を抜かれた。

 土地取得がバブル期であったにせよ、機械購入費とピット建設費で周辺の土地(水田)を206台分は買えたはずで、敷地内にも70台分の平置き駐車をすれば周辺土地が140台分で済むから、なお購入の可能性は十分あったと思われる。平置きなら駐車場収入の殆どを修繕積立金にまわすことが可能であった。ともかくオール機械式であっても当初数年間のメンテナンス費用はわずかであり、周辺の民間駐車場が1台3000~4000円でも駐車場徴収費を低く抑えられた。次第に故障が頻発するとメンテナンス費用は上がるが、利用者の減少が同時並行した。故障で機械の運転が不能になると困る人は一人だけで済まず、機械の種類によっては24台が一度に動かなくなる場合もあったようだ。

 こうなると多少遠くても周辺の平置き型の民間駐車場の方が安心だ。当てにしていた駐車場収入が減り始め、値上げすれば、利用者は減ることが予想された。そこで管理組合は2007年に機械式駐車場を廃止する方向を確認し、まず隣地に400坪66台分の土地を購入。駐車料金は1台月4000円だから評判は上々。5箇所の機械を撤去し埋め戻したが、その一部は自転車置き場に変えられた。駐車場に供する土地を購入したくても、土地を売る農家がいなければ交渉にもならない。水田が目の前にあるからと言って簡単に購入できる訳ではないが、この事例は地価が低い場所での機械式問題の解決方法の一端を示した。

 ところで、機械式駐車場の廃止に取り組んだマンションは他にも見つけられた。Rマンション(1991年分譲、52戸、高崎市)は9台分の平置きと42台分の機械式駐車場があったが、最近18台分の機械を撤去して6台分の平置きとした。市街地に立地するが機械式の駐車料金は現在一律1台6000円で、周辺では5000円である。もともとRV車が入らない不満があった上に、故障が多発する位なら周辺の平置き駐車場と契約した方がましとの判断が強まった。実は首都圏でも多くのマンションで機械式駐車場の更新時期を迎えつつあるが、その中で廃止に踏み切るマンションが次々登場しても不思議でない。 (つづく)

(2008年11月号掲載)