新マンション事情

住宅と大規模非住宅との複合ビルの危険2

前橋市駅と中央商店街の中間に建つAマンションは7階建てで1976年竣工。地下駐車場と1階の商店、2〜3階がオフィス、4〜7階が40戸の分譲住宅の複合建築だが、2〜3階は借り手がいない。競売不調続きだから管理費や修繕費積立金の滞納額は増すばかりだ(ここまでは本年4月号に掲載した)。オフィス部分が空室になった理由は、民間企業の支店や営業所がバブル崩壊後次々前橋市から撤退し、中心市街地に空きビルが増えたことによる。
Aマンションに拠点を置いていた地元企業は使い勝手の良いビルに移転した。中心市街地の夜間人口、従業者数、商品売上高が減じ続けている状況で、当該マンションの存続条件は悪化こそすれ、改善の見込みは少ない。大規模修繕の無期限延期で、老朽化が進行し、マンションの中古価格の下落と住宅の競売件数増加が顕著となった。管理組合が取り組み可能な範囲は住民の滞納額を減らすこと位で、他はいかんともし難い状況だ。
住宅と非住宅の大規模複合事例は他県にもあるはずと思って探したら意外にもすぐ見つかった。熊谷駅から徒歩12分の商業地にあるB複合建物である。1〜3階が元スーパーとクリニックで4〜9階が分譲マンション96戸で1973年に竣工した。住宅部分が9265m2、非住宅部分は8273m2の巨大ビルだが、15年前にスーパーが経営破綻し、その後クリニックが撤退した。競売も不調続きだから、管理費や修繕積立金の滞納額は蓄積する一方となった。途中スーパーの債権者が買い物客用の駐車場を住宅建設用地として処分してしまったため、再建はより困難になった。非住宅部分の管理組合に対する滞納総額は2億9千万円、このほかに固定資産税の滞納額が加算されるから、多分予告最低価格を1万円にしても落札は困難だ。もちろん住宅部分も中古の下落は激しいから、住宅所有者の滞納額も蓄積しAマンション同様、大規模修繕実施が困難となった。結果、建物の劣化は極限に近づいている。複合ビルの利便性を信じて住宅を購入した人々にとっては思わぬ災害である。

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前述の2つの事例がもし東京都内に立地していたら、迅速なテナントの交代が可能だから、共同管理体制が崩壊する恐れは少ない。
しかし車社会化、中心市街地の空洞化が進む地方都市や大都市圏縁辺部では、複合建築における大規模非住宅の経営の失敗が全体管理に再生不可能なほどのダメージを与える危険性が高いことに注目すべきだ。今後地域の人口減少が加速すれば危険性はさらに広がりと深さを増す。
ところで、2事例とも居住世帯の半分以上が借家で、空き家も多数あるようだが、長期の異常事態が諦め気分を蔓延させている。再生の妙案があるものなら是非取り込んで欲しいが管理組合は既に当事者能力を失っている。問題は老朽化が極度に進行し、居住不能になった時だ。
巨大ビルのまま税務署に物納は可能だろうか。多分役所は嫌がるに違いない。     (つづく)

(2008年10月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)