事例
(横領) 小規模マンションにおける管理費横領事件
多額の管理費等の管理は万全ですか?
管理費や特に修繕積立金は数千万円から数億円積み立てられており、それを狙う人々がいるのも事実です。したがって、いかに不正できない会計システムを構築するかが管理組合の課題となっています。この問題について2回にわたり掲載します。
今回、紹介する事例は降って湧いた事件ではあるのですが、計画的な横領です。
ここはJRのとある駅から徒歩10分。近くにはスーパーがあり、美術館、公園を控えた閑静な住宅街。そこに、築30年超5階建てEVはない40戸に満たないマンションがある。事務所・事務局はないが自主管理を行っている。毎年5名の居住者が輪番で役員を担当、輪番表は総会で承認されている。数年に1度順番が回ってくるが、「一度理事長と会計を担当した組合員は、2度やらなくても良い」というような、役員の担当について妙な慣習があった。それらの業務はそれだけ大変だ、との認識があったようだ。
事件の発生
数年前、役員交替時期を迎え、前述の慣習により役員経験者がいながら理事長と会計の引き受け手が出ませんでした。仕方なく入居1年足らずの主婦が理事長をやることになり、会計担当理事には、居住暦が永く自称会計の専門家と称すAが手を挙げたのです。
理事長は、管理組合のことは何も分からずAにまかせっきりで、Aはキャッシュカードを作り、好き勝手に管理費等を引き出し、それを個人的に流用したのです。
監事は、普段何かと面倒見の良いAに逆らえず、関係書類・預金通帳も確認しないまま監査とは言えない「監査」を行い、総会で監査報告を行なったのです。
事件の発覚
B氏は、うすうす管理組合の会計および運営がずさんであることに気づいており、再三、理事会に会計の明瞭性について指摘してきたのですが、改善されませんでした。ところが、B氏が役員となる総会の監査報告で事件が表面化し、総会の席で、Aは横領の事実を認め、一気に表沙汰になったのです。Aはその場で謝罪をしました。
被害額の回収
Aは当初、「返済する気持ちはあるが、現実的に返す金がない」と開き直っていました。Aは、息子との二人暮らしで、家の所有は2人の共有となっています。B氏は、区分所有法上、息子も訴えの対象になると説明し、総会に両名を呼び出し皆の前で謝罪させました。
法的措置をとることになり、弁護士に相談したところ、弁護士はAを債務者とし、息子を連帯保証人とする「債務承認並びに債務弁済契約公正証書」を提案し、それを実行し、現在予定どおり回収中であるという。
再発防止策
このような不正は、どの管理組合でも起こり得ることなのです。この場合、B氏のような人がいたから回収ができたのですが、そうでないとうやむやになった可能性が高く、不正したものが得をするということにもなりかねないのです。そのお金は、みんなの重要な積立金だったり、管理費だったりで、補填ができないのです。
管理組合では、総会の承認を得て「事務改善委員会」を立ち上げ、次のような不正防止策を検討中であるといいます。
- 中断していた月次決算システムを改善し、会計担当理事の負担を軽くし実施再開。半期監査の実施と結果報告の実施
- 理事長および会計再担当禁止慣習の撤廃
- 役員輪番制の見直しと、役職検討開始
- 理事長・会計・監事の業務マニュアルの作成検討開始
理事、監事の職責を果たそう
この事例で言えることは、不正は簡単に行えるということです。それを助長しているのが、特定の人を過大評価して、変な形でその人に任せてしまうことと、面倒なことは自分では関わりたくないとばかりに、それを押し付けてしまう、他の理事の無責任体質も大きく関係しています。
次回は、会計システムや監査の方法などについて検証してみたいと思います。