高齢化社会とマンションライフ
19.親族近所居の蓄積と近居の相手
首都圏団地での調査結果
筆者は首都圏で20〜28年経過の大規模6団地の親族近居世帯率を調査したが、その際、親族の定義を6親等まで、徒歩15分以内の距離とした。複数の親族と近居する世帯も少なくないが、その場合の親族は血縁の濃い方の、同距離の血縁がいる場合は空間距離が短い方の親族を代表させた。
団地が長期経過すると団地居住世帯から世帯分離、Uターン、呼び寄せが生じるから、親族近居が団地内のみならず、団地周辺にまたがって蓄積する。これらは団地内の居住世帯住宅だけではなく、団地周辺居住世帯からも、世帯分離等が生じた場合の受け皿として分譲住宅が利用されるから、団地と周辺にまたがる親族近居はさらに蓄積する。
6団地の合計親族近居率は23.1%に達するが、最も蓄積が多い分譲後27年経過の都内K団地で34%、最も少ない21年経過の郊外T団地で13%あった。総じて、経過年数が多いほど近居世帯率が上昇する。さらに多くの団地で最近になるほど、親族がらみ入居率が高まっているが、特に都内団地の入居率が高く、最も高いK団地の場合、最近5年間の入居者の45%が、徒歩15分以内に先に居住する親族を有していた。即ち親族近居が、中古市場の中では無視出来ない大きな量に達している。
世帯主年齢別の親族近居
世帯主年齢別に親族近居世帯の割合を見ると、若年と高年が高く、40〜60歳の中間年齢世代は谷底を形作っている。
ところが都内と都内以外の郊外地域に分けて分布を見ると、郊外は前述の傾向を更に強調した放物線を描くに比べて、都内団地では30〜40歳をピークに、加齢するに従って親族近居率は低下する。
この立地による差は、都内では40〜60歳を占める兄弟近居が多いのに対して、郊外では兄弟近居率が少なく、また都内では若年者の親が団地外にいる割合が高いに比べて、郊外では周辺の住宅密度が薄いため、親子が団地内近居を選択する割合が多いためのようだ。
親族がいる世帯全体について
親族がいる世帯全体を100%とした場合、近居相手が親の比率は37%、子の比率は31.3%、兄弟比率は25%、孫と祖父母従兄弟等の関係は6.7%である。
親子で同じ比率にならないのは、親が子の場合より分譲団地の外にいる比率が高いためだ。後から入居した世帯の管理開始後の経過年数別に、先に居住していた親族を見ると、早い時期では兄弟関係が多く、年数経過してからは、親の近くで世帯分離や呼び寄せられた子供が増える。
親自身が子供に呼び寄せられて、分譲団地内に転入する世帯は少ないが、分譲団地に先に居住した側から分析すると、団地外部に親を呼び寄せる割合が高い。高齢の親が団地外でどのような住宅を選択したは不明だが、呼び寄せられる世帯は呼び寄せ側世帯に比べて少数世帯が多いから、小規模な民間借家が多いと推測させる。
住宅政策上の課題
今後、離婚・未婚で子供がいない世帯や、子供が居ても近居を当てに出来ない世帯が増える。兄弟を含めた幅広い親族近居が居住の安心感を生む可能性が高い。同居に対応しにくい集合住宅が増加しつつある大都市では、近居促進を住宅政策上の推進課題とすべきだ。
管理組合も、危機管理上、近居の実態を把握して置くべきであろう。
松本 恭治
(2003年8月号掲載)