高齢化社会とマンションライフ
18.分譲集合住宅に於ける呼び寄せ高齢者問題
多くの呼び寄せ高齢者が淋しさ
東京町田市の福祉部が平成5年6月に実施した呼び寄せ高齢者の実態調査の結果は極めて衝撃的な内容であった。43.2%の呼び寄せ老人が「淋しさ」を感じており、以前の「居住地に戻りたい」と感じている老人が32%いたのだ。
この調査のあと多摩市でも同様の調査を実施したが、ニュータウン内の親族が呼び寄せた高齢者の多くがニュータウンに入れず周辺の民間アパートに居住している実態が明らかにされた。
ワンルームマンションでは若年単身者の中で生活するのだから昼間の近隣交流は少ない。家族用の民間アパートに入っても隣人は共働きやパート労働で忙しい。親族が近くにいるとはいえ高齢者同士の交流がなければ、移転したことを後悔する人が多くいても不思議はない。
町田市と多摩ニュータウンの調査の違いは引き寄せ側について町田市では戸建て住宅が多く、多摩市では集合住宅居住者が多いことである。戸建てでは同居が、集合住宅では近居が選択され易い。
呼び寄せ高齢者の調査結果
この頃筆者も首都圏の20〜30年経過の大規模な5分譲団地(有効回答2328票)について住まい方調査を実施していた。
過去に3世代同居を経験している高齢者85人がどのような過程で同居しそれを解消したかを追跡した。呼び寄せられた高齢者は29人、同時入居または前住宅で同居していた高齢者は56人であった。
同居の解消原因のうち85人中61人が死亡であり、高齢者の世帯分離が11人、老人ホーム入居・他の親族宅転出などを含むその他の理由が11人であった。
大規模住宅ほど死亡転出が多かったから、小規模住宅での同居には緊急避難が含まれる。同時入居・従前同居の場合は呼び寄せより死亡転出が多く、居住期間も長い。呼び寄せ高齢者の中で2年未満で同居を解消した高齢者は29人中12人であるが内、死亡が3人、世帯分離が3人、その他の転出が6人であった。同時・従前同居の場合は2年未満の同居解消者は9人であったが内7人が死亡であった。
呼び寄せの平均居住期間は5.6年、同時・従前同居の場合は10.9年であったから呼び寄せの方が居住が安定しない。死亡転出までの平均居住期間、死亡時平均年齢は呼び寄せの場合8.2 年・84歳、同時・従前同居では10.4年・80歳であったから呼び寄せの方が入居時年齢が高いことになる。平均居住階は高層で呼び寄せの場合6.3階、同時・従前同居の場合4.3階で、中層の場合夫々3.5階、2.6階であった。呼び寄せの場合は世帯主が住宅取得した時点で将来の同居の可能性を想定していなかった場合が多いことを伺わせる。
近親者の努力だけでは難しい
超高齢なだけに階段昇降は深刻であったと推測できる。最後の居住の場で近隣交流が少なかったであろうことは、現在居住する高齢同居者が同年齢の世帯主やその配偶者より交流が少ないことからも推察される。
呼び寄せ同居、呼び寄せ近居の高齢者はいずれに於いても住環境や慣れない社会環境等の問題が少なくない。家族・親族の努力に任せるだけでは問題を軽減できない。
せめて人生の最後に尊厳のある暮らしを保障する社会にしたいものだ。
松本 恭治
(2003年7月号掲載)