住まい方

写真や文書の保存とメンテナンス その2

思い出の写真を保存

写真保存の場合、長く保存したい写真は基本的にアルバムを利用します。密封状態を作ることにより、写真は空気から守られ、紫外線も防げます。それでも古くなるとやはり写真の端側から茶色く退色、変色が進んで来ます。
アルバムの台紙自体が極力劣化を抑える、写真に影響を与えない100年台紙という商品も市販されています。 アルバムは本棚よりも、密封できる収納ボックスなどのプラスチック容器に入れて保管した方が湿気や害虫、有害なガスからも守られます。素材もポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン(PP・PET・PE)等の表示のある物を選び塩化ビニール系のものは避けます。
また古いアルバムに貼られた写真には中性紙を被せる、包む、挟むなどで保護しておくと良いでしょう。それ以外のものは容器に入れ高温多湿、紫外線を避け保管します。

●スクラップブッキングに挑戦する

「スクラップブッキング」とは、1980年代にアメリカで始まり、90年代に人気が高まったアルバム作りの一つです。
普通のアルバム整理の為や単なる記録の為に留まらず色紙やシール、ビーズなどをあしらい自由なレイアウトで個性的に装飾するクラフトアートの一種です。アメリカではその専門のショップや書籍などが数多くあり、最近では日本の大きな文具店などにもコーナーを設けている所もあり講習会なども行われています。プリントしたままの状態の多くの写真も趣味として楽しみながら整理することでいつまでも保存できるのではないでしょうか。

スクラップブッキングで個性豊かなアルバム作り
スクラップブッキングで
個性豊かなアルバム作り

●全ての写真の色は褪せてしまう

古いカラー写真はどうしても色の劣化が進みます。最近ではメーカーから100年もつという製品が登場していますがそれもやはり家での保存にかかっています。重要な物は、焼き直しで複製を作り、ネガやポジフィルムも保存することになります。現像後のネガ、ポジの退色を避けるためには、密封できるプラスチックの収納ボックスに、乾燥剤を入れ、風通しを考えながら直射日光があたらない場所で湿気、ホコリなどがない温度差の少ない場所に保管します。ポジフィルムの場合、状況により10年以上はもたせることが出来ますがネガの場合は劣化が激しく長期保管は期待できません。古いカラーフィルムから焼き直しした場合オリジナルとかけ離れた写真が仕上がって来ます。

大切な写真はいつまでも残したいはず
大切な写真はいつまでも残したいはず

●インクジェットの写真とエコー写真

パソコンの普及でデジカメで撮影した写真を自宅のインクジェットプリンターで出力される場合も多いと思います。最新の機種では100年の保存性をカタログに記載しているものもありますが以前の機種のプリントは以外に早く褪色してしまいます。又おなかの中の赤ちゃんのエコー写真を大事に保管されている方も多いと思いますが感熱紙で出来ている為これも早く画像が消えてしまいます。これらは早めに写真屋さんで普通の写真にプリントしてもらい保存してください。

●デジタルによる保存

こうした劣化に対処するために最近はビデオテープやCD−R、DVD等のデジタル媒体で保存している方も多いはずです。しかしこのデジタル媒体も絶対ではありません。各メディアの推定寿命はCD−Rで10〜30年、DVD約30年、フロッピー20年以上、ビデオ、カセットの磁気テープ30年以上です。デジタルデータの保存にはやはり高温多湿、紫外線、汚れ、酸、を避け、特に磁気を避けることに注意します。光ディスクは温度湿度を一定に保つことが大事で、温度15度〜20度、湿度25%〜45%、変動幅24時間、2度以内5%以内が理想的と言われています。ハードウェア環境の変化等を考えると現在使われているデータが100年後に変わらず使用可能という技術的保証は今のところありません。重要データは定期的にバックアップするようにします。又、デジタルデータはあくまで普段の利用の為と考え長期保存の対象はやはりオリジナルを残すことが大切です。

最新のメディアも100年後の保証は無い
最新のメディアも100年後の保証は無い

●専門家による修復

こうした自宅での保存に不安がある物は専門のトランクルームの利用や、すでに劣化の進んだ物には修復のプロに依頼する方法もあります。個人所有の貴重な歴史的史料等を専門家に修復依頼する場合、(1)素材のドライクリーニング(2)脱酸性化処置による腐食予防(3)植物繊維や生麩糊による補修などの処置が施されます。
これら未来へ残すべき物の中には歴史的史料ばかりとは限らず個人の大切な思い出も含まれるはずです。日頃から家庭で適切な保管とメンテナンスを行い家族の記録を大切に残していきたいものです。

(集合住宅管理新聞「アメニティ」303号 2007年12月号掲載)

写真や文書の保存とメンテナンス その1

「思い出」や「記録」の保存法

マンションという限られた空間では、あらゆる物を整理整頓しながら綺麗に暮らすことが必要になります。そのため日頃使用頻度の低いものは当然押入れやクローゼットの奥深くしまわれることになります。しかしその中でも特に思い出のある物や貴重な資料、重要書類など今後半永久的に保存することが前提の物がある場合、その保管状態によっては思いもよらぬほど劣化が進む場合があります。主にここではその素材が紙でできた物(写真、手紙、書籍、書画等)や写真用フィルム、磁気テープなどの保存方法について説明します。

●紙が消える!酸性紙の劣化

家庭の中で今後長期にわたり保存しておきたいものを考えると賞状や卒業証書、資格や免許の証明書、契約書、証書類、日記やノート、手紙、子どもの絵、パンフレットなど意外に紙でできたものが多いものです。しかしこの紙という媒体は日本では80年代頃までは「酸性紙」というpH6.5未満の極めて紙の繊維を劣化させる物が使われていました。この酸性紙はその保管場所の温度上昇と湿度の低下が繰り返されると紙の水分が徐々に失われ最終的にはボロボロに劣化していきます。紙をゆっくりと燃やすように消してしまうことから「スローファイアー」とも呼ばれ、「酸性紙問題」として公文書館や図書館を中心に大きく取り上げられました。現在は徐々に酸性紙の3〜5倍長持ちする「中性紙」に切り替えられ酸性紙の新刊本は全体の2割未満になりました。

次第に形を無くす本や資料
次第に形を無くす本や資料

●再生紙は長期保存に向かない?

最近では環境問題から古紙をリサイクルして作る「再生紙」も普及してきました。地球環境を考えると再生紙の利用は大変良いことですが長期保存用の素材としてはバージンパルプから作られる中性紙を選ぶべきです。再生紙は原料の古紙に様々な紙が混入する可能性があり、品質の一貫性、純粋性が保証できないこと、長期の耐久性についてまだ研究結果が無いなどの問題があります。

●酸性紙と中性紙の見分け方

家にある書籍や資料が酸性紙か中性紙かを見分けるには食酢に紙の小片を入れ、割箸などで沈めると、中性紙の場合は、ごく小さな泡が発生します。また、紙を燃やして黒い炭化物ができるのは酸性紙で、白い灰になるのは中性紙です。酸性紙は硫酸イオンがあるので繊維が炭化します。  市販の便利なもので「中性紙チェックペン」があります。インクの代わりにpH指示薬が入っており、紙をこのペンでなぞると、中性紙の場合は変化しませんが酸性紙の場合には瞬間的に色が変わります。

●意外と保存に適さないダンボール箱

その他に虫、カビ、紫外線、チリ、ホコリ等も紙にとって悪影響を与えます。紙で出来た物の保存には中性の封筒や容器に入れ、暗い場所(温度18〜22度、湿度50〜60%)に保管することが重要です。また普通のダンボール箱は酸を発生し易く中の物を汚染します。昔ながらの保存箱として桐箱がありますが質の良いものは高価なうえ手に入りにくくなりました。ちなみに着物などをしまってある箱に一緒に入れることは厳禁です。防虫剤が入れてある場合資料に大きなダメージを与えます。風通しに気を配り、市販の「アーカイバル容器」(酸を含まない長期保存に適した容器)などを利用すると安心です。

安価な段ボール箱は酸性紙で出来ているため資料に悪影響を与える
安価な段ボール箱は酸性紙で出来ているため
資料に悪影響を与える

●子供の絵や賞状の保存

子供の絵や賞状など少し大きな紙の物をそのまま保存する場合は中性紙を綴じたスケッチブックの様な物の間に挟んで保存します。折りたたんである図面などは中性紙の封筒で保存。一枚の封筒に1点の保存が原則です。
子供のスケッチも大切に保存
子供のスケッチも大切に保存

●掛け軸の保存

自宅の床の間に掛け軸などがある場合注意する点はやはり温度、湿度、紫外線です。また長期間(半年〜1年以上)掛けたままの状態では日焼け、シミ、反りなどで美術品の価値を下げてしまいます。専門家は3ケ月程で1度桐箱などにしまい、年に2回程虫干しをするようすすめています。

(集合住宅管理新聞「アメニティ」302号 2007年11月号掲載)