過去事例(外壁等)

≪大規模修繕工事≫高経年マンション、安全・安心・良質な住まいに向けて/SIマンション(東京都)

株式会社スペースユニオン
一級建築士 奥澤健一


マンション概要

 SIマンションは東京メトロ丸ノ内線「中野坂上」から駅徒歩7分、周辺にはスーパー、ドラックストア、飲食店などが揃う利便性の高い立地環境にある。竣工は1976年(昭和51年)。SRC造、地上8階建て、総戸数112戸、1階には店舗、事務所、医院が入る。建物の平面形状はT字型の中廊下形式。立面的には斜線制限の関係で北側隣地に向けてセットバックしており、最上階から中間階までルーフバルコニーが付帯している。


工事までの経緯

 建物の竣工から41年、前回の外壁修繕工事から16年が経過し、建物外部の各所に傷みが見受けられるようになった。特にタイル張りの斜壁形状となっている建物最頂部では、前回の外壁修繕工事で施された透明樹脂被膜材の白濁汚染が顕著で外観を損ねていた。一部では雨漏り箇所に対する応急処置を講じていたほか、広い範囲でタイル下地面からの浮きも生じており、欠落も懸念される状況にあった。


工事内容の検討

 外壁は南面の正面側が磁器質タイル張り、東西および北側は塗装仕上げとなっている。
工事内容や範囲の検討に当たっては、まず優先すべき課題となっていた斜壁部分の欠落防止と漏水の抜本的な解消、次いで屋上やルーフバルコニーなど各所の防水および建物外装の美観回復を基本事項とした。
 その上で館内の美装性、機能性、利便性に向けたグレードアップ工事を慎重に検討した。事前のアンケート調査ではアルミサッシや玄関扉に関する不満も少なくなかった。エントランスホールをはじめとする館内各所は、基本的に新築時からのしつらえのままであり、やや時代遅れを感じると言わざるを得なかった。
 アンケートや工事計画に関する居住者説明会などで寄せられた意見を踏まえ、現在の資金状況と照らし合わせながら理事会メンバーと協議を重ねた。最終的には、アルミサッシの改修は先延べするものの、各戸玄関扉の更新、エントランスのオートドア化、エントランスホール内天井および床の全面改装、館内床仕上材の全面張替え、照明器具の全LED化など、現状維持に留まらない多くの意匠や機能的向上工事を実施することとなった。


工事の実施

 工事は平成29年9月から平成30年2月までの約6ヶ月間を要した。最大の懸案であった斜壁部分は、既存のタイルを下地部分からすべて撤去し、アンカーピンとステンレスワイヤーで補強しながら新たな下地を構築し、アスファルトシングル葺きとした。屋上、その他各所床面は高靭性・高強度型ウレタン塗膜防水材での再防水。外部廻りには鉄筋曝裂やタイルやモルタルの浮きが少なくなかったが、所定の方法で補修したのち再仕上をおこなった。玄関扉は枠カバー工法による更新、エントランスは既存サッシと両開き扉を撤去し、ガラスサッシと組み合わせた両引きオートドアを取り付けた。
 館内の廊下や階段は石綿が含有したビニル製床タイルで仕上げられていた。将来に禍根を残さないためにもビニル製床タイルは撤去し、新たな床材で改装することとした。既存ビニル製床タイルの撤去にあたっては、フロアやエリアごとに区画して、玄関等はすべて目張したうえで通行を一定時間制限しての作業となった。
 その他、エントランスホール内の改装にあたっては、施工会社からのデザイン提案を受け、理事会メンバーで何度も話し合いながら色柄や割り付けなどを決定した。従前の面影を残しながら、落ち着いた良質な空間へのイメージチェンジが図られたと思われる。


斜壁のアスファルトシングル葺き改修
 斜壁のアスファルトシングル葺き改修
一新されたエントランスホール
 一新されたエントランスホール
外観
 外観


設計・監理=株式会社スペースユニオン
施工=ヤシマ工業株式会社


(2018年8月号掲載)