3回目の大規模修繕工事 色彩計画が居住者に好評:2017年3月号掲載

 当団地は、八王子市東南部の丘陵地に位置し、多摩市に隣接している。交通至便であり、東京都住宅供給公社分譲で築40年を経過している。建物は住棟鉄筋コンクリート5階建て、3DKタイプ2棟100戸、3LDKタイプ2棟70戸の4棟、管理集会室棟鉄筋コンクリート2階建て1棟で構成され、170戸の小規模団地であるが、敷地面積は広大で、ほぼ全所帯の平面駐車場を持ち,住棟間隔が広く、ケヤキなどの植栽が十分あり周辺も雑木林に隣接する環境に恵まれている。空室も少なくリノベーションによる新しい居住者も増えている。3年前、簡易建て替え計画を外部専門家に依頼作成した結果、当団地単独での建て替えは困難と考え今回の改修工事に着手した。

過去の修繕歴

 過去の修繕歴は ① 第1回外壁等改修 87年 ② 屋根防水改修 92年 ③ 給水管改修 97年 ④ 第2回外壁等改修 02年 ⑤ 排水管改修 14年 であり、97年の給水管改修を除きすべて設計監理を担当した。

 計画に先立ち建物調査から劣化状態を図面化する中で、外壁の塗膜の浮き剥がれが顕著であることが分かった。原因は大震災の影響が考えられるが直接の原因は経年劣化による塗膜の付着力低下であり、特にクラック周辺で局部的なこと、バルコニーなど塗膜防水部や手すりの付け根付近のクラックからの水の浸入がある場所であった。

 前回の改修では見られない事であるが40年もたつと新たな劣化が進行していることが分かり、改めて改修計画の心構えとなり、各部の改修仕様の作成に取り掛かった。

今回の工事

 工事範囲は、建築部門が建物外部全体とし、屋根・外壁・バルコニー・階段室、外構の柵・自転車置き場等、設備部門が屋外埋設給水管、屋内給水管(以前ライニング補修)、竪管等前回取替えたものを除くものとした。

 改修仕様は特別なものではなく高品質の汎用仕様としようとした。ただ、室内給水管改修については、床下の現状が木下地ではなくシンダーコンクリート内での配管であり、管理区分が共用部であることから露出配管とし主に壁面に配管した。これにより、今後は専有部となる。

 見積合わせにより最低価格を提示した建装工業を施工者とした。工期は7月中旬から12月25日、建築部門と設備部門を総合した施工体制がとられた。監督技術者4名、事務員1名の5名体制で居住者とのコミュニケーションを密に施工された。建築・設備と工事内容が大きく工事用仮設用地はC駐車場に2階建て事務所、作業員室また資材置き場3棟、ごみコンテナ置き場、トイレを含み駐車台数8台(他に通路部に数台)が確保できたことは幸いであった。

 足場仮設が終わると緻密な調査とメーカーを含めた施工会議がもたれた。結果は修繕委員会での協議により工事費を含む追加変更を行なった。特に、室内工事は内装・家具の設置・特に洗面台、ユニットバスへの更新など調査と配管系列の変更が生じた。結果的には各戸での性能性の違いがあり合意形成に時間が掛かることが多くあった。また、区分所有者との連絡が取りにくく行程的に苦労した。

 階段室では、床に塩ビ製シートを張ったがドア下の間隔がとれず勾配直しが難しかった。また、照明器具をLEDに更新したが従来の蛍光灯と照度分布に違いが生じ検討にてこずった。また、階段室廻りの付属部品で経年劣化が著しい室名札・郵便受け・掲示板・電気メーターボックスの更新が行われ、住棟アプローチから各住戸入口まで気持ち良いプロローグが得られた。

 年が明け竣工式を迎えたが、今回の大規模修繕工事は大変良いとの感想を多くの居住者から寄せられていると組合から言われ嬉しく思った。

 原因は、色彩計画が大変良かったと考える。従来は、既存に近い色彩にしたが今回は、委員会の色彩に対して熱心な提案があり、変化とチェンジをテーマに検討がなされた。外壁は茶色、手摺を黒にしようとの提案にまず驚き戸惑いを感じたが、メーカー・カラーコーデネーターに色彩計画を作成してもらった。景観条例を含み、なかなか難しい作業であったようだが何とかまとめた。結果は。茶色は茶系統と理解し同じように黒も真黒ではなく茶と青を少し入れ外壁色と同化した。

 また、建物が長く単純であることから縦のアクセントに白系統を使いメリハリを持たせた。

 現場事務所では、監督技術者たちと、工事内容、仕様変更など新たな提案を検討する中で、本建物の耐用年限はどう考えるか、たとえば、屋上マンホールをステンレス製に、また、給水管の耐用年限も従前に比べ大変長くなる。

 工事も終盤を迎えたころ、耐用年限と施工品質の関係などを、真剣に論じられる様になり、敷地全体計画、高齢化社会での集会所の在り方、集合住宅のプライバシー・セキュリティなどを含め団地の再生をどの様にするか。最近の大型マンションを参考に、考えるようになった。メモ的な図面も書いてみたりした。

 これを機会にK団地の将来像を提案し、修繕委員会共々進めることもできそう。この様な動きは大変好ましい。「再生塾」の芽生えになればよいと思う。

(あい設計今井 俊一)
設計コンサルタント=株式会社あい設計、施工=建装工業株式会社

(2017年3月号掲載)