免震構造マンションの第1回目大規模修繕工事:2014年8月号掲載

 当団地は、南北街区に全7棟で構成された総戸数336戸の団地型マンションである。また、2つの街区は、人口地盤上に、免震構造にて各棟が建てられ、免震層の下に駐車場と機械室等共用施設がある。当団地には、新築時の瑕疵問題と免震構造でありながら外構の地震挙動納まり不良による損傷を受け、そのコンサルティングを行っていたことをきっかけに、築11年を過ぎたところで大規模修繕を実施することになった。工期は、作業員不足による工程の遅れがあったが、綿密な工程計画により、約10か月の工事期間で完成した。

S団地

鼻先PC板接合部の不具合

◆建物構造による足場の特徴

 建物が免震構造となっているため、一般的な外部足場の架設が不可能な部分が多く、設計段階から足場の架設方法を検討した。その結果、枠組足場とゴンドラ足場を併用することが合理的と判断した。超高層棟は、2階に専用のステージを設置し、全面ゴンドラ足場とした。また、中・高層棟は、外部足場の架設可能な妻壁部を枠組足場とし、その他のバルコニー及び外廊下部等は、数台のゴンドラ足場を盛替えながら工事を行うこととした。

◆建物デザインによる特徴的な不具合

 当団地は、曲面を多用したデザインのため、施工性からバルコニー及び外廊下の床版の先端部のみPC板になっていた。防水納めが不十分でPC板間に蓄水し、漏水が多発していた。PC板間のシーリング打ち替えには、漏水と蓄水の予防的な観点から、排水溝及びPC接合部を一体的にウレタン樹脂防水とし、あげ裏先端に水抜き穴を設けることにした。

◆屋上緑化と防水不具合

 建物は、セダムによる厚さ10㎝程度の屋上緑化があり、周囲を残して部分的に設置されたため、排水障害、露出防水材のよじれや浮き等が発生し、防水劣化が極端に進んでいた。撤去しても緑化条例による制限に抵触しないことが確認できたため、屋根のセダム植栽を撤去することにした。セダム植栽を撤去することによる断熱効果の低減を考慮して、断熱材の厚さを50mmに付加した断熱かぶせ工法により、アスファルト露出防水の遮熱仕様で全面更新を行った。

◆階段のドア開閉の安全対策

 内部階段1階の扉は、外廊下や郵便受コーナーに面しているため、不意に扉を開けたときに居住者がぶつかる事故が顕在化していたため、安全対策としてガラス窓付扉(防火ドア認定品)に交換した。

2014年8月号掲載