1回目から2回目へ、工事の連続性が好成果:2017年8月号掲載

マンション概要

 Eハイツは、宇都宮駅から徒歩数分の立地に建つ利便性の良い郊外都市型マンションである。当マンションは、総戸数51戸、地上11階建てとなっており、1985年に新築・分譲された。今回の工事は第2回目の大規模修繕工事である。

 第1回目の大規模修繕工事は2004年に実施しているが、第1回目・第2回目共、設計・監理は㈱スペースユニオンが担当している。そこで、本稿では第1回目を踏まえた第2回目の工事の特徴を報告する。

第1回目の大規模修繕工事の概要

 Eハイツはタイル張りのマンションであり、2004年に実施した第1回目の大規模修繕工事では、徹底した外壁タイル・下地・躯体の補修、外壁・天井の塗装、バルコニー・共用廊下床の全面防水改修、エレベーターホール内の改装を実施した。なお、近年では第1回目の工事時に、新築時の施工不具合を要因とするタイルの異常な浮きが報告されることが増えているが、当マンションの第1回目工事時のタイル補修数量は、一般的な範疇と言えた。外壁塗装は溶剤型のウレタン系塗料を採用し、共用廊下やバルコニー床は、排水溝・巾木をウレタン塗膜防水、床平場をビニル床シートで全面改修した。

第2回目の大規模修繕工事の実態

 工事の実施段階では施工者による躯体の全面打診調査が実施されたが、鉄筋爆裂等の下地不具合は想定より少なく、第1回目の工事の成果を感じ取る事が出来た。ただし、手摺壁周りにあっては比較的多いひびわれが確認された。手摺壁のひびわれは第1回目の工事時にも相当量の補修を実施しており、当建物における特徴的な劣化の一つにもなっている。そこで今回の工事では、手摺壁に生じたひびわれの内、比較的大きなものにあってはひびわれ部分に伸縮目地を新規に形成し、今後のひびわれ発生防止にも配慮した。
 タイル仕上部は、事前の建物調査で良好な付着強度が確認されていたものの、中間階を主体に多量の浮きが確認された。第1回目の工事で一定レベルの補修を行っている事や、中間階を中心に浮きが多いことなどを踏まえると、この要因は2011年に生じた東日本大震災の影響が少なからずあると考えられた。タイルの全体補修数量は、この事を受けて追加精算となったが、それでも想定範囲内の精算金額に収める事が出来ている。また、当建物には斜壁になっているタイル面があるが、この部分に対しては、工事中の判断としてタイル下地への雨水の流入、ならびにそれに伴う将来的なタイルの不具合を予防する為、防水性能が期待される保護材を塗布した。

 共用廊下・バルコニー床は、第1回目の工事で施工したビニル床シートが比較的良好であったので、今回の工事では床の張り替えは行わず、シート端部のシーリング、ならびに排水溝・巾木のウレタン塗膜防水の補修に留め、工事費の削減を図った。

おわりに

 工事全体を見ると、第1回目の工事の成果が今回工事に与える影響は多々あり、マンションの長期的な保全を勘案する上では、大規模修繕工事も連続的に捉えていく必要性がある事を再認識した。その上で、今回工事が次回の工事に与える影響を考慮すると、ひびわれやタイル不具合部は単に補修するだけでなく、今後の不具合予防に配慮することが重要になると言える。

 工事の連続性は運営面にも当てはまり、第1回目の工事に携わった管理組合役員の皆様が、今回工事の運営にも加わっていただき、工事をスムーズに進める事が出来た。これは、大変ありがたい事であった。

(株)スペースユニオン 一級建築士 藤木亮介

設計・施工=株式会社スペースユニオン
施工=南海工業株式会社

(2017年8月号掲載)