管理委託相談会からー管理人個人と管理組合との業務契約は委託関係になるか、雇用関係になるか? (2003年8月号,10月号掲載)

Q.

東京都下、60戸のファミリー型マンションで築30年。  管理人が管理運営を牛耳っていて困っています。どうしたら管理人を替えられるでしょうか。

(状況確認)

1.住み込み管理人は入居当初より30年間同じ人です。業務は管理会社に委託せず、管理組合と管理人個人との間で旧建設省の標準的な「管理委託契約」を締結しています。

2.管理人が契約書通りの業務をしていないので、理事会から業務の改善を要求したが感情的に反発してくるだけで改善されません。委託契約的違反で辞めさせることはできるでしょうか。

A.

1.最初は委託管理を正常化したいという相談であったが、話しを聞いて、これは自主管理の管理組合ではないかと思います。管理組合は管理人と委託契約を締結しているので委託管理と考えているようですが、状況によっては管理組合と管理人との間に雇用関係が成立すると解釈されることがあります。

2.他人の労務の利用を目的とする契約には、請負、委任(委託)、雇用の三つの形態があります。この契約の区分には単純に外形だけで判断するものではなく、実態に則して判断されます。

3.管理人や清掃員と直接契約している管理組合で、契約内容を曖昧なままに運営されている事例が多く見られます。形式的に請負とか委託契約になっていても、実質上「使用従属関係」がある場合は雇用関係が認められ、管理組合は雇用主としての業務と責任を負うことになります。

4.本件の場合、委託関係となれば委託解約の問題となり、雇用関係の実態を備えている場合には、労働関係法に基づく解雇手続きの問題となります。雇用関係が認められる可能性がありますので、再検討してください。

5.管理組合の中には、責任意識が曖昧になっている団体が多くみられます。その原因を辿れば、組合役員の1年交替制にあるのではないかと思います。とにかく1年任期中は何事のなく務めあげ、問題があっても先送りする、というものです。

特に本件マンションのような自主管理の管理組合は、問題は深刻になります。管理人が管理組合運営を牛耳っているといっても、そうならざるを得なかったと想像できます。
つまり、管理人に任せっ放しにしてきた結果にすぎないと思います。

6.自主管理の場合には、役員は1年で全員交替する方法ではなく、2~3年任期にして、少しずつ交替する方法を採用してください。そうしなければ管理組合による継続的な管理運営はうまくいきません。本件マンションも、先ずそこから取り組むべきだと思います。

回答者:NPO日住協・専門相談員
久保泰男
(2003年8月号,10月号掲載)