「インターネット使用料と管理費」(2014年11月号掲載)

当マンションは、インターネット専用回線やネットワークなどのインターネット設備を備え、各戸は個別の契約なしにインターネットを利用できます。そこで、規約により、インターネット利用費に相当する額として、1戸あたり一律約3000円を管理費等に含め、区分所有者の負担としています。ところが、区分所有者のAさんは、自分はインターネットを利用していないから、インターネット利用費に相当する額については支払を拒否すると主張しています。管理組合はAさんに請求できないのでしょうか。

建物の管理に関する区分所有者相互間の事項は、規約で定めることができますから(区分所有法30条1項)、管理業務によって発生する管理費等の負担は、規約によって定められます。そして、その規約は、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければなりません(区分所有法30条3項)。

参考となる判例として、広島地裁平成24年11月14日判決(判例時報2178号46頁)があります。

判例は、インターネット設備そのものにかかる費用とインターネット接続回線契約等に基づき発生する費用とを分けて検討しています。まず前者については、「インターネットサービスに係る物理的なLAN配線機器等のインターネット設備そのものは、本件マンションの区分所有者の共用部分であるということができるから、その保守、管理に要する費用は、本件マンションの資産価値の維持ないし保全に資するものであるということができ、したがって、その費用は各区分所有者が一律に負担すべきものである」と判断しました。

次に後者、すなわちインターネット接続回線契約等に基づき発生する費用については、インターネットを実際に利用していない者にとっては特に不満が大きいところと思われます。この点について判例は、「(インターネット)サービスが本件マンションの全戸に一律に提供されているということは、本件マンションの資産価値を増す方向で反映されるから、これらに要する費用についても、本件マンションの資産価値の維持ないし増大に資するものといえ、その観点からは、各区分所有者が、本件インターネットサービスの利用の有無にかかわらず、その費用支出による利益を受けているといえる」とした上で、インターネットサービスの利用の有無を考慮して個別に利用料金を定める場合に発生するコストの問題を回避できることや、一律徴収される額にはインターネット設備の保守、管理に要する費用も含まれる以上、不相当に高額とはいえない、などの理由から、「インターネットサービスの利用の有無を考慮することなく一律にインターネット利用料金の支払を負担すべき旨規定している本件管理規約…は、(区分所有法30条3項)の趣旨に照らしてみても、区分所有者間の利害の衡平が図られていない故に無効であるとまではいえない」と判断しました。

したがって、インターネットを利用していないAさんに対してもインターネット利用費を請求することは可能ですが、その一律徴収額は、不相当に高額にならないよう注意が必要です。

回答者:法律相談会 専門相談員 弁護士・内藤 太郎
(2014年11月号掲載)